恋人の習慣で気になることがあっても、言い方を間違えると関係が悪くなるだけで終わります。厚生労働省は、相手の気持ちや考えを尊重しながら、自分の気持ちや考えをその場に適した表現で伝える方法を「アサーション」と呼んでいます。この記事では、伝える前に整理すること、切り出す場面の選び方、言い換えの型、伝えた後の扱いを順にまとめます。
伝える前に、何が問題なのかを分ける
気になっていることをそのまま口に出すと、話が広がりすぎて着地しません。先に3つに分けてみてください。
- 実害があること(生活費が足りなくなる、体調に関わる、約束が守られない)
- 自分の好みと合わないこと(食べ方、片づけ方、休日の過ごし方)
- 他の人がいる場面で困ること(言葉づかい、時間の守り方)
このうち伝える必要があるのは1つ目と3つ目です。2つ目は、相手が直す理由を見つけにくく、話し合っても平行線になりやすい種類です。全部をまとめて伝えようとすると、実害のある話まで「好みの押し付け」として受け取られます。
アサーションという考え方
厚生労働省「こころの耳」は、アサーションを次のように説明しています。
相手の気持ちや考えを尊重しながらも、自分の気持ちや考えをその場に適した表現で伝えるコミュニケーション方法
出典:アサーション:用語解説|こころの耳(厚生労働省)
大事なのは「相手を尊重しながらも」と「自分の気持ちを伝える」が両方入っているところです。我慢して言わないのも、強く言って相手を押し切るのも、この形からは外れます。
言わずに済ませると、同じことが続いて不満がたまります。強く言うと、内容ではなく言い方のほうが問題になります。伝える内容を変えるのではなく、伝え方を選ぶという考え方です。
切り出す場面を選ぶ
内容が同じでも、場面によって受け取られ方が変わります。
- その行動が起きている最中は避ける(指摘された、と受け取られやすい場面です)
- 相手が疲れているとき、急いでいるときは避ける
- 人がいる場では言わない(第三者の前だと、相手は引けなくなります)
- 時間に余裕がある日に、短く切り出す
「今いい?」と先に確認してから話すだけでも、身構えられ方が変わります。長く話す必要はありません。1回で全部を解決しようとするほど、相手にとっては重い時間になります。
並んで座る、歩きながら話すといった形も使えます。向かい合って座ると、話し合いというより面談のような場になります。内容が同じでも、身構えさせない場のほうが話は進みます。
言い方の型
伝えるときは、主語を自分にするほうが受け取られやすくなります。
| 避けたい言い方 | 言い換え |
|---|---|
| いつも脱ぎっぱなしだよね | 洗濯かごに入れてもらえると助かる |
| なんで連絡しないの | 帰りが遅くなるときは、ひとこと連絡がほしい |
| また使いすぎてる | 今月の支出を一緒に見たい |
| そういうところが直らない | この場面では、こうしてもらえると助かる |
ポイントは3つあります。「いつも」「また」「絶対」といった言葉を使わない。過去の回数を持ち出すと、事実の確認から始まって本題に入れません。人格ではなく行動を言う。「だらしない」ではなく「洗濯かごに入れてほしい」です。そしてしてほしいことを具体的に言うことです。やめてほしいことだけ伝えても、相手は次に何をすればよいか分かりません。
先に聞く
伝える前に、相手の事情を聞く順番にすると、話がこじれにくくなります。厚生労働省の「こころの耳」は、話を聴くことについて、相手の話をそのまま受け止める姿勢を大切にする考え方を紹介しています。
実際の会話では、次のような形になります。
- まず質問から始める(「あれ、何か理由があるの?」)
- 返ってきた答えを最後まで聞く(途中で「でも」と挟まない)
- 受け取ったことを短く返す(「なるほど、疲れて後回しになるのか」)
- そのうえで、自分の希望を言う
この順番にすると、相手は説明する機会を持てます。いきなり要求から入ると、まず反論を考えることになります。まず相手の話を聞き、そのうえで自分の希望を伝える形にすると、双方の内容を分けて整理できます。
ただし、聞くこと自体が目的ではありません。理由を聞いたうえで、こちらの希望も言葉にするところまでがひとまとまりです。聞いて終わりにすると、我慢する形に戻ります。
1回で変わらない前提で考える
習慣は、指摘された翌日に変わるものではありません。1回言って変わらなかったことを「聞いてくれなかった」と扱うと、関係のほうが先に悪くなります。
- 期限を切らない(いつまでに、と決めると相手は追い詰められます)
- 変わった場面には反応する(できた日に何も言わないと、やる理由がなくなります)
- 同じことを何度も言わない(伝わっているなら、繰り返しは圧力にしかなりません)
相手にも言い分があります。事情を聞かずに変更だけ求めると、こちらの都合を通す話になります。「なぜそうしているのか」を先に聞くと、別の解決策が出てくることもあります。
それでも変わらない場合
何度伝えても変わらない場合、判断する材料は2つに分かれます。
- 相手が納得していない … そもそも問題だと思っていない。伝え方ではなく、認識が違う
- 納得しているが、続かない … 仕組みの問題。環境を変えるほうが早いことがあります
後者であれば、置き場所を変える、決まった時間にやる形にするなど、意志の力に頼らない形にできないかを一緒に考えるほうが進みます。洗濯かごを動線上に置く、支払いの記録を共有のアプリにする、といった具合です。相手の性格を変えようとするより、手が届く場所に仕組みを置くほうが実行されます。
前者の場合は、まず認識をそろえる話が必要です。こちらにとってなぜ問題なのかを、具体的な影響で説明してみてください。「気になるから」ではなく「この曜日の朝に間に合わなくなる」のように、起きている事実で伝えるほうが伝わります。
なお、こちらが繰り返し我慢して黙っている状態が続いているなら、それも長く続けないほうがよい状態です。厚生労働省は、対処能力を上回るストレッサーが続くと反応が慢性化し、活気が低下すると説明しています。言わずに済ませることが、負担のない選択とは限りません。
まとめ
- 伝える必要があるのは、実害があることと、人前で困ること。好みの違いは平行線になりやすい
- アサーションは「相手を尊重しながら、自分の気持ちも伝える」方法。我慢も押し切りも、この形から外れる
- 場面を選んで短く切り出す。その行動の最中、疲れているとき、人前は避ける
- 「いつも」「また」を使わず、行動と、してほしいことを具体的に言う
- 1回で変わらない前提で。期限を切らず、変わった場面には反応する
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