別れた相手と同じ職場で働き続けるのは、気持ちの問題だけでなく、働きやすさにも関わります。厚生労働省の調査では、仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスがある労働者は68.3%で、就業形態によっては「対人関係」が上位に入ります。この記事では、距離の取り方、周囲への伝え方、業務を回す方法を整理します。
まず、どこまで変えられるかを確認する
対応を考える前に、自分の裁量で変えられる範囲を把握しておくと、無駄に消耗しません。
- 席の配置(変えられるか、申し出る先はどこか)
- 業務上の接点(直接やりとりが必要か、間に人が入れるか)
- 勤務時間(時差出勤やシフトの調整ができるか)
- 異動の可能性(制度としてあるか、申し出る時期は決まっているか)
いずれも変えられない場合もあります。その場合は、変えられないことを前提にして進め方を決めるほうが、期待して待つより負担が小さくなります。
業務上のやりとりだけに絞る
いちばん実行しやすいのは、やりとりの内容を業務に限定することです。
- 連絡は記録の残る形にする(口頭ではなくメールやチャット。内容も後から確認できます)
- 用件だけを書く(近況や雑談を混ぜない。短い文面で構いません)
- 2人だけになる場面を減らす(打ち合わせに第三者を入れる、オープンな場所で話す)
- 個人的な依頼を受けない・しない(業務外の頼みごとは、関係が戻る入口になります)
冷たく接する必要はありません。挨拶や業務上の受け答えは普通にしたうえで、それ以上に広げないという形です。極端に避ける態度は、周囲にも伝わります。
周囲への伝え方
職場の人が関係を知っている場合と、知らない場合で対応が変わります。
- 知られていないなら、無理に言わなくてよい(説明する義務はありません)
- 知られている場合は、短く1回だけ伝える(「もう別れました。仕事には影響しないようにします」程度で十分です)
- 詳細を聞かれても答えなくてよい(「それはちょっと」で切ってよい範囲です)
- 相手の悪い点を言わない(巡り巡って本人に伝わり、職場の問題になります)
周囲が気を遣って話題を避けることもあります。こちらが普通に業務をこなしていれば、その状態は自然に収まります。
気持ちの整理は職場の外で
厚生労働省の「こころの耳」は、日常生活でストレッサー(原因になる出来事)を経験すると、心理面・身体面・行動面にストレス反応が現れると説明しています。対処能力を上回るストレッサーを経験したり、ストレッサーが長く続いたりすると反応が慢性化し、活気が低下してくるとしています。
顔を合わせる状況が続くのは、ストレッサーが続いている状態にあたります。職場で完結させようとせず、外に出す場を持っておくほうが続きます。
厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」では、ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.6%でした。相談できる相手は「家族・友人」68.6%、「上司」65.7%の順です。ただし実際に相談したことがある人は、相談できる人がいる労働者のうち74.7%にとどまります。
この件については、職場の人より外の相手のほうが話しやすい場面が多くなります。社内に話すと、情報が広がる可能性があるためです。
業務に影響が出ているとき
気持ちの問題として扱える範囲を超えることもあります。
- 必要な情報が回ってこない
- 評価や担当の割り振りに影響が出ている
- 相手から執拗に連絡が来る、私的な接触を求められる
- 社内で関係について言いふらされている
こうした状態は、業務上の問題として扱う場面です。厚生労働省は、職場のパワーハラスメントを①優越的な関係を背景とした言動 ②業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動 ③就業環境が害されるの3つをすべて満たすものと説明しています。
相手が上司や先輩にあたる場合、この枠組みで考えられることがあります。社内の相談窓口のほか、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」が無料で相談を受け付けています。
記録は残しておいてください。いつ、誰から、どのようなことがあったかを書いておくと、相談するときに話が早く進みます。
やらないほうがよいこと
- 復縁を期待しながら接する(接点を増やす理由になり、区切りがつきません)
- 第三者を介して様子を探る(周囲を巻き込む形になります)
- SNSで相手の動きを追う(職場で顔を合わせる相手だと、情報が増えるほど切り替えにくくなります)
- 自分から新しい関係を職場で作ろうとする(急いで埋めようとすると、職場内の関係が複雑になります)
相手の態度が変わったかどうかを気にし続けるのも、消耗する部分です。相手がどう振る舞うかは変えられないので、こちらの対応を一定にしておくほうが疲れません。日によって態度を変えると、相手も周囲も対応に迷います。
時間が経てば楽になる部分もあります。異動や退職で状況が変わることもあります。いま判断しなければならないことと、時間に任せてよいことを分けておくと、抱える量が減ります。
自分の側を整える
同じ職場で働き続ける以上、体調を保つことが前提になります。厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、ここ1か月で睡眠で休養がとれている人は74.9%で、平成21年からの推移では有意に減っています。1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性38.5%・女性43.6%です。
眠れていない状態では、同じ出来事でも反応が強く出ます。気持ちの整理より先に、睡眠と食事を確保するほうが実行しやすい部分です。
状態が続くときは
厚生労働省は、気分の落ち込みや睡眠の問題などの症状が2週間以上続く場合には「うつ」が疑われるとして、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをすすめています。
出社そのものがつらい状態が続くなら、産業医や社内の相談窓口に相談する選択肢もあります。働き方や配置の調整につながる場合があります。
まとめ
- 自分の裁量で変えられる範囲を先に確認する。変えられないなら、その前提で進め方を決める
- やりとりは業務に限定する。記録の残る形で、用件だけ。極端に避ける態度は周囲に伝わる
- 周囲には短く1回だけ。詳細を答える義務はなく、相手の悪い点は言わない
- 気持ちの整理は職場の外で。相談できる人がいる労働者は94.6%だが、実際に相談した人は74.7%
- 業務に影響が出ているなら、業務上の問題として扱う。記録を残し、社内窓口か総合労働相談コーナーへ
情報源:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」個人調査第17表・第18表・第19表、厚生労働省「こころの耳」ストレス軽減ノウハウ、厚生労働省「あかるい職場応援団」パワーハラスメントの定義、厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」
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