洗濯物を畳んでくれない。あるいは、もう夫の分は畳みたくない。どちらの入り口から来た方にも、同じことが言えます。畳むのをやめるのは、手抜きではありません。総務省の調査では、6歳未満の子どもがいる世帯の家事時間は夫30分に対して妻2時間58分。この差のなかで「畳む」を自分の仕事から外すのは、理にかなった判断です。この記事では、畳む工程そのものを減らす方法と、夫の分だけ畳まないと決めるときの手順、それでも頼みたいときの言い方をまとめました。
「畳まない」と決めるのは、投げ出すことではない
畳んでくれないことに、もううんざりしている。その段階の方も、たどり着く先はたいてい同じところです。何度言っても変わらないなら、自分がやめるしかないのではないか、と。
そう思ったとき、先に来るのは罪悪感だと思います。自分が意地になっているだけではないか、これくらいで争うのは大人げないのではないか、と考えてしまいます。
けれど、これは洗濯物の話ではないはずです。畳まれていない山は、「またこれも自分がやる」ということが目に見える形になったものです。だから、洗濯物そのものより重く感じます。
しかもこの不満は、説明しにくいものです。「洗濯物くらいで」と言われそうで、口に出すと自分が小さい人間に見える気がしてしまいます。言えないまま溜まっていくところまで含めて、しんどい問題です。
「畳まない」は、放置とは違います。洗って干して、その人が取り出せる場所に置く。ここまでやっていれば、洗濯という家事は成立しています。畳んで引き出しにしまうところまでを一人が引き受ける決まりは、どこにもありません。
数字で見ると、実際に偏っています
「自分ばかりやっている気がする」が気のせいかどうかを確かめられるデータがあります。総務省の社会生活基本調査です。
6歳未満の子どもがいる夫婦と子どもの世帯について、1日あたりの時間を週全体で平均したものです(2021年)。
| 行動 | 夫 | 妻 |
|---|---|---|
| 家事 | 30分 | 2時間58分 |
| 育児 | 1時間5分 | 3時間54分 |
| 買い物 | 18分 | 33分 |
| 介護・看護 | 1分 | 3分 |
| 家事関連の合計 | 1時間54分 | 7時間28分 |
洗濯や料理などの「家事」だけを見ると、妻は夫のおよそ6倍の時間を使っています(2時間58分÷30分で約5.9倍)。出典は令和3年社会生活基本調査 結果の要約|総務省統計局(2022年8月31日公表)の表2です。
この数字は6歳未満の子どもがいる世帯のものなので、すべての夫婦に当てはまるわけではありません。それでも、特別に偏った家だけの話ではないことは分かります。
変化もあります。2016年と比べると、夫の家事時間は13分増え、妻は9分減りました。さらにさかのぼると、2001年の夫の家事時間は7分です。20年で4倍以上になっています。差は縮まってきていますが、まだ大きく残っています。
なぜ「畳む」だけが残るのか
洗う、干す、畳む、しまう。このうち畳むところで止まる家庭が多いのには、理由があります。
- 終わりが見えにくい:洗うと干すは、やれば終わります。畳むは「しまう」までが一続きで、どこまでやれば終わりなのかが曖昧です
- どこに戻すか知らない:誰の服がどの引き出しに入るのかを把握していないと、畳んでも置くだけになります。そして「置きっぱなし」と言われます
- やってもやり直される:畳み方が違うと直される。それが数回続くと、やらないほうが摩擦がない、という学習が起きます
- そもそも畳む必要を感じていない:しわが気にならない人には、畳む工程の意味が伝わっていません
どれも「思いやりがない」という話とは少し違います。やり方が共有されていないだけのことが多いです。最後の1つのように、そもそも何を気にするかがずれている場合は、結婚後に価値観が合わない…それでも愛が続く夫婦の秘訣のほうが近い話かもしれません。
なお、逆の立場でこのページに来られた方もいると思います。妻が洗濯物を畳まなくなった、という側です。この記事の後半のうち「そもそも畳む量を減らす」と「それでも頼むときの言い方」は、立場を問わずそのまま使えます。ただし上の数字は6歳未満の子どもがいる世帯の平均で、どの家庭にも当てはまるものではないので、そこは切り分けて読んでください。
そもそも畳む量を減らす
担当を分ける前に、畳む工程そのものを小さくしておくと、もめる場面が減ります。
ハンガーのまま、しまう
いちばん効きます。ハンガーで干して、乾いたらハンガーごとクローゼットへ移す。畳む工程そのものが消えます。
シャツ、ブラウス、パーカー、子どもの上着。この方式に移せるものは意外と多いです。ハンガーを増やすだけで始められます。
人ごとのカゴを置く
畳まないで、その人のカゴに入れるだけにします。畳むかどうかはその人が決めるので、こちらの仕事は「分ける」だけになります。
「自分の分は自分で」を口で言うより、カゴを置くほうが早く定着します。
畳まないものを決める
タオル、下着、靴下、部屋着。丸めて入れるだけと決めてしまうと、畳む対象が半分以下になります。見た目は少し崩れますが、引き出しを閉めれば見えません。
畳む場所をテレビの前にする
畳むこと自体をなくせない分は、やる場所を変えます。座って一人で黙々とやる作業より、テレビを見ながらのほうが人は手を出しやすくなります。
「手伝って」と言わなくても、目の前に山があると触る人は触ります。頼む回数が減るのは、こちらの負担としても大きいです。
「夫の分は畳まない」と決めるとき
いちばん現実的な落としどころが、これだと思います。全部やめるのでも、全部やるのでもなく、担当を分ける形です。
ただし、言い合いのなかで暴力や、それに近い威圧が出ている場合は、この方法を試さないでください。一方的に担当を降りることが、相手を刺激する引き金になることがあります。先にDV相談+(0120-279-889、24時間受付)か、お近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる #8008 に相談してください。
やめる前に決めておくこと
- どこに置くかを先に作る:これが抜けると、ただ散らかっているだけになります。相手用のカゴを1つ用意して、そこに入れる。ここまでが自分の担当だと決めます
- 黙ってやめない:予告なくやめると、当てつけとして伝わります。伝わってほしいのは「もうやらない」ではなく「ここまでにする」のほうです
- 言い方は短く:「これから自分の分は自分で畳んでもらえる?カゴに入れておくね」。理由を長く説明するほど、反論の材料になります
- 畳まれないまま溜まっても、戻さない:ここがいちばん耐えるところです。見かねて畳むと、次から元に戻ります
溜まったまま動かないとき
カゴがいっぱいになっても、平気な人は平気です。困っていないので動きません。
そこで我慢比べをすると疲れるので、困る形にするほうが早いです。カゴを1つしか置かない。次の洗濯物が入らなくなれば、そこで初めて自分の問題になります。
それでも動かないなら、その人はしわを気にしていないということです。畳まれないことを問題だと思っているのは自分だけ、という可能性も一度考えてみてください。もしそうなら、畳ませることに労力を使うより、目に入らない置き場所を作るほうが楽になります。
やめてみて分かること
実際に手を離すと、思っていたほど困らないことが多いです。しわのついたシャツを着ていく日があっても、たいてい誰も困りません。
そこで「自分が抱えていたのは、必要な仕事ではなく、やらないと気が済まなかった仕事かもしれない」と気づくこともあります。そう思えたら、そこはもう手放していい部分です。
それでも頼むときの言い方
仕組みを変えても、頼む場面は残ります。伝わりやすい形があります。
| 言いがちな言い方 | なぜ届かないか | 言い換え |
|---|---|---|
| なんでいつも畳んでくれないの | 性格を責められたと受け取られ、防御に入る | この山、今日中に片付けたいから半分お願い |
| 少しは手伝ってよ | 何をすればいいのか分からない | タオルだけ畳んでもらえる? |
| 私ばっかりやってる | 比較になり、相手も自分の負担を数え始める | これが終わらないと座れなくて、しんどい |
| 気が利かないよね | 人格の評価。何度言っても行動は変わらない | 気づいたときに、カゴに入れてくれると助かる |
コツは3つです。1回に1つだけ頼む。どこまでやれば終わりかを言う。やってくれたら畳み方を直さない。
最後の1つが難しいところですが、直すのは相手が見ていないときにしてください。目の前でやり直すと、次からやらなくなります。
やってもらったことに、気づいて言う
畳んであったのに何も言われないと、やった側は「やってもやらなくても同じ」と受け取ります。逆に「助かった」と一言あると、次も手が出ます。仕組みを作っても、ここが抜けると元に戻りやすいところです。
とはいえ、毎回感謝を言うのはこちらも疲れます。気づいたときだけで十分です。
家事の偏りが、夫婦の問題になってきたら
洗濯物の話が、いつのまにか「私のことをどう思っているのか」という話になっていることがあります。そうなると、畳む畳まないでは収まりません。
この段階では、家事の分担を細かく決めるより、お互いが何をしんどいと思っているかを一度出すほうが先です。相手にも見えていない負担があるかもしれません。
それでも噛み合わないときは、家庭裁判所の話し合いの場を使う方法もあります。夫婦関係調整調停の進め方をまとめた記事のなかで説明しています。
相談先
家事の分担が、話し合いで収まらない段階になったときの入口です。
- お住まいの自治体の男女共同参画センター:都道府県や市町村が設置している施設です。名称は自治体によって異なり(「女性センター」など)、相談窓口を置いているところもあります。内閣府の情報・相談窓口一覧から、お住まいの地域の施設を探せます
- 法テラス・サポートダイヤル 0570-078374:法的なトラブルについて、適切な法制度や関係機関を紹介してくれます。受付は平日9時から21時、土曜9時から17時(祝日・年末年始を除く)。利用料は無料で、通話料は発信者の負担です(出典:お電話でのお問合せ|法テラス)
くり返しになりますが、言い合いのなかで暴力や、それに近い威圧が出ている場合は別です。話し合いを試みる前に、DV相談+(0120-279-889、24時間受付)か、お近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる #8008 に相談してください(出典:DV相談について|内閣府男女共同参画局)。
まとめ:覚えておきたい3つのポイント
- 「畳まない」と決めるのは手抜きではない。洗って干して、その人が取り出せる場所に置くところまでで、洗濯という家事は成立している
- 先に畳む工程そのものを減らす。ハンガーのまましまう、人ごとのカゴ、畳まないものを決める。担当を分けるのはそのあと
- やめるときは置き場所を先に作り、黙ってやめない。溜まっても見かねて戻さないことが、いちばん大事なところ
情報源(2026年7月時点で確認):総務省統計局「令和3年社会生活基本調査 生活時間及び生活行動に関する結果 結果の要約」(2022年8月31日公表)表2、法テラス「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」、内閣府男女共同参画局「DV相談について」「情報・相談窓口一覧」
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