親の介護が必要になったときに、最初に関わる制度が介護保険です。40歳から保険料を払い、要介護または要支援と認定されると、介護サービスを費用の1割から3割の負担で使えます。この記事では、対象になる人、使えるサービスの種類、自己負担の考え方、申し込みから利用までの流れをまとめます。
介護保険とは
介護保険は、市区町村が運営している公的な保険です。厚生労働省の「介護保険制度の概要」では、保険料と税金を半分ずつ財源にしていると説明されています。令和7年度の予算では、介護給付費が13.2兆円、総費用ベースでは14.3兆円です。
仕組みとしては、加入している人が保険料を払い、介護が必要な状態と認められたときに、サービスの費用の大部分を保険が負担します。利用する人が窓口で払うのは、原則としてかかった費用の1割です。
ただし、保険料を払っていれば自動的に使えるわけではありません。使うには、市区町村に申請して要介護認定を受ける必要があります。医療保険のように、保険証を持っていけばその場で使えるという形ではない点が、最初につまずきやすいところです。
使えるのは誰か
加入する人は年齢で2つに分かれます。
| 第1号被保険者 | 第2号被保険者 | |
|---|---|---|
| 年齢 | 65歳以上 | 40歳から64歳(医療保険に加入している人) |
| 使える条件 | 原因を問わない | 特定疾病が原因の場合に限る |
| 保険料 | 市区町村が徴収(原則、年金から天引き) | 医療保険の保険料と一緒に徴収 |
65歳以上の人は、介護が必要になった理由を問われません。転倒による骨折でも、認知症でも、加齢による衰えでも対象になります。
一方、40歳から64歳の人は、加齢に伴う病気が原因のときに限られます。この病気は介護保険法施行令の第2条で16種類が定められていて、がん、脳血管疾患、初老期における認知症、パーキンソン病、関節リウマチ、慢性閉塞性肺疾患などが含まれます。
このうち「がん」には条件が付いています。条文は「医師が一般に認められている医学的知見に基づき回復の見込みがない状態に至ったと判断したものに限る」としています。がんの診断を受けたことで直ちに対象になるわけではありません。
65歳になれば自動的にサービスを使うわけではない
同じ厚生労働省の資料に、認定を受けている人の割合が出ています。令和4年度末の時点で、65歳以上の3,585万人のうち要介護または要支援の認定を受けているのは681万人、19.0%です。
年齢で分けると差がはっきりします。
- 65歳から74歳 ― 71万人(4.3%)
- 75歳以上 ― 610万人(31.3%)
40歳から64歳の第2号被保険者では、4,188万人のうち13万人(0.3%)です。
65歳になったら使い始めるものではなく、必要が出てきたときに申請するものだということが、この数字からも分かります。
どんなサービスがあるか
制度上はサービスの名称が細かく分かれていますが、使う側から見ると次の5つに整理できます。
- 家に来てもらう ― 訪問介護(ホームヘルプ)、訪問看護、訪問入浴介護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導
- 通う ― 通所介護(デイサービス)、通所リハビリテーション
- 泊まる ― 短期入所生活介護(ショートステイ)、短期入所療養介護
- 住まいを変える ― 特定施設入居者生活介護(有料老人ホームなど)、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)、介護老人保健施設、介護医療院
- 道具と住まいを整える ― 福祉用具貸与、特定福祉用具販売、住宅改修
このほかに、ケアプランを作ってもらうこと自体も介護保険のサービスです。居宅介護支援と呼ばれ、ケアマネジャーが担当します。現在は、ここに利用者の自己負担はありません。
なお、要支援1・2と認定された場合は「介護予防」が付いた名称のサービスになり、市区町村が行う総合事業も使えます。総合事業の内容は市区町村ごとに違います。
自己負担はいくらか
負担の割合は、原則1割です。所得が高い人は2割または3割になります。
割合の基準は施行令で決まっていて、合計所得金額が160万円以上で2割、220万円以上で3割が対象になります。ただし、同じ世帯にいる65歳以上の人の年金収入などの合計額によって、2割や3割にならない場合があります。
自分で計算して確かめる必要はありません。対象になる人には、市区町村から「介護保険負担割合証」が毎年届きます。そこに1割・2割・3割のどれかが書かれています。サービスを頼むときは、この証書を事業所に見せます。
1か月に使える量には上限がある
介護保険には、1か月に使えるサービスの量の上限があります。これを区分支給限度基準額といい、要介護度ごとに決まっています。単位という独自の数え方を使います。
| 区分 | 1か月の上限(単位) | 10円換算した場合の目安 |
|---|---|---|
| 要支援1 | 5,032 | 50,320円 |
| 要支援2 | 10,531 | 105,310円 |
| 要介護1 | 16,765 | 167,650円 |
| 要介護2 | 19,705 | 197,050円 |
| 要介護3 | 27,048 | 270,480円 |
| 要介護4 | 30,938 | 309,380円 |
| 要介護5 | 36,217 | 362,170円 |
右の列は、1単位を10円として計算した目安です。実際のサービス費は、地域やサービスの種類によって1単位あたりの金額が異なるため、この円換算額がそのまま利用上限額になるとは限りません。都市部では高くなります。正確な金額は、ケアプランを作るときにケアマネジャーが示します。
要介護1で1単位10円の地域なら、1か月に約167,650円分のサービスまで保険が使えて、そのうち1割の約16,765円を自己負担する、という形になります。
この上限を超えて使った分は、全額が自己負担になります。1割ではなく10割です。ケアマネジャーと相談しながら、限度額や本人の状態に合わせてサービスの組み合わせを考えます。
なお、この上限の単位数は厚生省告示第33号で定められていて、最終改正は平成31年、適用開始は2019年10月です。それ以降は変わっていません。
使い始めるまでの流れ
相談から利用開始までは、次の順に進みます。
- 相談する ― 市区町村の介護保険の窓口、または地域包括支援センター
- 申請する ― 申請書に介護保険の被保険者証を添えて提出します
- 認定調査と主治医意見書 ― 調査員が面接して心身の状況を調べ、かかりつけ医が意見書を書きます
- 認定結果が届く ― 要支援1・2、要介護1から5、非該当のいずれか
- ケアプランを作る ― 要介護ならケアマネジャー、要支援なら地域包括支援センターが担当します
- サービスを使い始める
申請の方法や、訪問調査で見られること、結果が出るまでの流れは、要介護認定とはでまとめています。
手続きで知っておくと楽になる点が、介護保険法の第27条に2つあります。
1つは、本人が窓口に行かなくてもよいことです。条文は、居宅介護支援事業者や地域包括支援センターに「当該申請に関する手続を代わって行わせることができる」としています。施行規則では、この場合に申請書へ「提出代行者」と表示することになっています。本人が窓口へ行けないときは、地域包括支援センターなどに手続きを代わって行ってもらえる場合があります。家族が代わりに提出できるかどうかは、お住まいの市区町村の窓口に確認してください。
もう1つは、結果が出るまでの期間と、その効力の始まる日です。
- 申請に対する処分は、申請日から30日以内が原則です(第11項)
- 認定は申請のあった日にさかのぼって効力を生じる(第8項)
結果を待っている間は使えないように見えますが、効力は申請日まで戻ります。急いでサービスが必要なときは、認定を待たずに始める方法もあります。ただし認定結果によっては自己負担が生じることがあるので、市区町村やケアマネジャーに相談してから進めてください。
親が入院中で、退院に合わせて使い始めたい場合は、入院中でも要介護認定を申請できる?でまとめています。
費用が高くなったときに戻る制度
1か月の自己負担が一定額を超えたときは、超えた分があとから戻ります。高額介護サービス費という制度です。
| 世帯の状況 | 1か月の上限(世帯) |
|---|---|
| 課税所得690万円以上の65歳以上の人がいる世帯 | 140,100円 |
| 課税所得380万円以上690万円未満 | 93,000円 |
| 上記以外で、市区町村民税が課されている世帯 | 44,400円 |
| 世帯の全員が市区町村民税非課税 | 24,600円 |
| 生活保護を受けている人など | 15,000円 |
市区町村民税が課税されている世帯でも、所得区分によって上限は44,400円、93,000円、140,100円に分かれます。施行令は、世帯で合算した自己負担が44,400円を超えた場合に支給すると定めていて、所得の高い世帯についてだけ、この金額を93,000円や140,100円に読み替える構造になっています。
世帯全員が市区町村民税非課税で、年金収入などの合計額が年間82万6,500円以下の人は、個人としての上限が15,000円になります。
一方で、この制度の対象にならない費用があります。戻るのは介護サービスの利用者負担(1割から3割)の部分だけです。
- 施設の食費・居住費(部屋代)
- 福祉用具の購入費、住宅改修費
- 限度額を超えて全額自己負担になった分
- 日常生活費、おむつ代など
施設に入ったときの食費や部屋代には、別に軽減の仕組みがあります。該当するかどうかは市区町村が判定します。
まとめ
- 介護保険は市区町村が運営する保険。保険料と税金で半分ずつ支えていて、令和7年度の介護給付費は13.2兆円
- 使うには申請と認定が必要。保険証を持っていけばその場で使える形ではない
- 65歳以上は原因を問わない。40歳から64歳は16種類の病気が原因のときに限る。認定を受けているのは65歳から74歳で4.3%、75歳以上で31.3%(令和4年度末)
- 自己負担は原則1割。2割・3割になる人には負担割合証が届く。1か月に使える量には上限があり、超えた分は全額自己負担
- 申請は家族や地域包括支援センターが代わりにできる。結果は30日以内が原則で、効力は申請日にさかのぼる
- 自己負担が月44,400円を超えたら戻る仕組みがある。ただし食費・居住費・用具の購入費は対象外
介護保険制度や介護報酬は改正されることがあります。このページは2026年10月時点で確認できる法令・厚生労働省資料に基づいています。今後の制度改正によって、負担割合や利用できるサービスなどが変わる可能性があります。
情報源:厚生労働省「介護保険制度の概要」(令和7年7月・老健局)、介護保険法第27条、介護保険法施行令第2条・第22条の2・第22条の2の2、居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号)、厚生労働省「介護保険最新情報」Vol.997(令和3年7月5日)