暮らし・人間関係

親戚付き合いがしんどいとき|法律上の義務と、距離の取り方・続け方

親戚付き合いがしんどい。もう会いたくない。そう思ってしまう自分を責めていませんか。まず知っておいてほしいのは、法律で決まっているのは「扶養」であって、日常の付き合いではないということです。そして、やめるか続けるかの二択でもありません。頻度を下げて続ける、という選び方もあります。この記事では、距離の取り方と、無理なく続けるための工夫の両方をまとめました。

「もう会いたくない」と思うのは、おかしなことではない

親戚付き合いの悩みは、人に相談しにくいものです。「家族なんだから」「昔からのことだから」と言われそうで、口に出せないまま抱えている方が多いと思います。

けれど、この問題は個人の性格の話ではありません。家庭裁判所に持ち込まれる夫婦の問題でも、申立ての動機として「家族親族と折り合いが悪い」が挙げられています。令和6年の司法統計では、夫からの申立てで1,699件、妻からの申立てで2,358件です(出典:令和6年司法統計年報 家事編(裁判所)の第19表。容量の大きいPDFです)。

裁判所に行くところまで進む人が、年に4,000件以上いる。あなたが我慢強くないから苦しいわけではありません。

しんどくなる理由は、だいたい決まっている

  • 価値観が違う:世代が変われば、子育ても仕事も家事も前提が違います。「私たちの頃は」と繰り返されると、否定され続けている感覚になります
  • 予定を勝手に決められる:突然の訪問、こちらの都合を聞かない集まりの日程。自分の休みが自分のものでなくなります
  • お金が絡む:お祝い、お香典、お土産、帰省の交通費。断りにくいぶん、積み重なると重い
  • 子どものことに口を出される:いちばん譲れない部分なので、いちばん傷つきます
  • 配偶者の親戚である:自分で選んだ関係ではないのに、自分が我慢する側になりやすい

どれか1つでも当てはまるなら、しんどいのは自然なことです。

法律で決まっているのは「扶養」だけ

「付き合いをやめたら、薄情なのではないか」と考えてしまう方に、線引きをお伝えします。

民法877条は、扶養の義務について次のように定めています。

直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。
家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。
出典:民法第877条第1項・第2項(e-Gov法令検索)

読み取れることは2つです。

  • 扶養の義務があるのは、直系血族(親・子・祖父母・孫)と兄弟姉妹です。おじ・おば・いとこは、原則としてここに入りません
  • それ以外の三親等内の親族については、家庭裁判所が「特別の事情がある」と認めたときに限って義務を負わせることができます。自動的に義務が生じるわけではありません

そしてここが大事な点です。この条文が定めているのは「扶養」であって、日常の付き合いではありません。訪問する義務も、集まりに出る義務も、連絡を返す義務も、法律には書かれていません(条文の全文はe-Gov法令検索の民法で確認できます)。

付き合いを減らすことは、法律に反する行為ではありません。「やめてはいけない」と思い込んで自分を責める必要はない、ということです。

やめるか続けるかの、二択ではない

ここまで読んで「じゃあ縁を切ろう」と決める必要はありません。実際に多いのは、その中間です。

  • 年に1回だけ会う
  • 集まりには出るが、泊まらない
  • 冠婚葬祭だけ付き合う
  • 配偶者だけが行き、自分は行かない
  • 連絡はするが、電話ではなく文字にする

どれも「やめた」わけでも「今までどおり」でもありません。頻度と深さを自分で決める、という選び方です。以下、距離を置きたい場合と、続けたい場合の両方を書きます。

よくあるトラブルと、その対策

場面が決まると、対策も決まります。よく起きる型を挙げます。

1. 連絡なしで訪ねてくる

「近くまで来たから」と突然来る。片付いていない家に上げることになり、予定していた休みが消えます。断ると角が立つので、毎回受け入れてしまう。

対策:その場で断るより、先に一度だけ伝えておくほうが効きます。「留守のことが多いので、来る前に連絡をもらえると助かります」。個別の拒否ではなく、こちらの事情として伝えるのがコツです。それでも来たときは、玄関先で「今日はこれから出るので」と用件だけ受けます。一度でも上げると、次も同じになります。

2. お金を貸してほしいと言われる

親戚間の金銭の貸し借りは、返ってこなかったときに関係ごと壊れます。断りにくい相手ほど、断らないと後が重くなります。

対策:「夫婦で決めているので」を理由にするのがいちばん角が立ちません。個人の判断ではなく家庭の方針にすると、相手も引きやすくなります。金額を下げて応じるのは避けてください。次回の基準になります。すでに貸していて返ってこない場合は、法テラスで相談先を確かめてください。

3. 子育てに口を出される

「そんな育て方では」「私たちの頃は」。いちばん譲れない部分なので、いちばん傷つきます。

対策:その場で論破しようとしないことです。「そうなんですね」で流し、方針は変えない。相手を納得させるより、こちらが消耗しないことを優先します。繰り返される場合は、血のつながっている側(自分の親なら自分)から一度だけ伝えます。義理の側から言うと、話が大きくなります。

4. 冠婚葬祭の金額や出欠でもめる

いくら包むか、誰まで出るか。前例がないと毎回悩み、決めたあとも「少なかったのでは」と引きずります。

対策:関係ごとの基準を先に作っておきます。「おじ・おばならいくら」「いとこの子は出ない」のように決めておけば、その都度の判断が消えます。相手に合わせて上げると、次から戻せません。

5. 介護や実家の片付けを押し付けられる

「近くに住んでいるんだから」で役割が決まってしまう。距離の問題が、そのまま負担の偏りになります。

対策:できることとできないことを、頻度で示します。「月に1回なら行けます」「泊まりは無理です」。断るのではなく上限を出す形にすると、話が前に進みます。金銭的な分担も同時に話すと、偏りが見えやすくなります。

6. 親の財産や相続でもめる

親が元気なうちは話題にできず、亡くなってから一気に噴き出します。感情の対立と財産の話が混ざると、当事者だけでは収まりません。

対策:この型は、後述の親族関係調整調停が想定している場面そのものです。裁判所も「親などの財産の管理に関する紛争等」を挙げています。当事者で話し合えないと感じた時点で、第三者を入れる段階だと考えてください。

7. 写真や近況を勝手にSNSに載せられる

子どもの写真、家の様子、帰省の予定。悪気なく載せられて、断りにくい。

対策:理由を「自分の考え」ではなく外の事情にします。「学校から言われているので」「仕事の関係で」。相手の判断を否定しない形にすると、受け入れられやすくなります。

距離を置きたいときの、具体的なやり方

断り方は、理由を短くする

丁寧に説明するほど、相手に反論の材料を渡すことになります。「その日は仕事が入っていて」と言えば「じゃあ次の週は」と返ってきます。

「今回は行けません。また落ち着いたら連絡します」くらいで止めるほうが、結果的に長引きません。理由を足さないことが、いちばんの断り方です。

頻度を先に決めておく

その都度断るのは消耗します。「お盆と正月だけ」「法事は出るが、それ以外は出ない」と基準を先に決めてしまうと、判断のたびに悩まなくて済みます。

基準があると、断るときも「うちはそうしているので」と説明できます。個別の拒否ではなく方針として伝わるので、角が立ちにくくなります。

夫婦で方針を揃える

ここが崩れると、いちばんこじれます。配偶者の親戚なら、窓口は配偶者にするのが原則です。自分が直接断ると、断った人として記憶されます。

逆に自分の親戚なら、自分が窓口になります。配偶者に矢面に立たせないことが、家庭内の不満を減らします。

連絡手段を変える

電話はその場で返事を求められます。文字なら、考えてから返せます。「日中は出られないことが多いので、LINEでお願いします」と一度伝えておくだけで、負担がかなり変わります。

続けたいときの、無理のない付き合い方

関係を切りたいわけではない、という方も多いはずです。むしろ「このままだと嫌いになってしまいそうだから、その前に何とかしたい」という段階かもしれません。

年間の予定を先に置く

お盆、正月、法事、誕生日。1年のどこで会うかを先に決めておくと、その都度の調整がなくなります。予定が読めることは、それだけで負担を減らします。

先に置いてあれば、それ以外の誘いを断るときも「その日は別の予定が」と自然に言えます。

滞在時間を決めてから行く

「何時に出ます」を先に伝えておくと、当日の引き止めを断りやすくなります。行く前に決めておくのがコツで、その場で決めようとすると流されます。

短くても定期的に会うほうが、長時間を年に一度より続きます。

お金のことは、額より基準を決める

お祝いやお香典は、「うちはこの関係ならこの額」と自分たちの基準を作っておくと、毎回悩まずに済みます。相手に合わせて上げ下げすると、次から戻せなくなります。

感謝は具体的に、短く伝える

もらいものへのお礼は、早く短く返すほうが続きます。長い手紙を書こうとして先延ばしになるより、その日のうちに一言のほうが関係は保てます。

言われて嫌なことは、その場で流す

価値観の違いは、話し合っても変わらないことが大半です。「そうなんですね」で流したほうが、こちらが消耗しません。納得させようとしないことが、続けるコツになります。

集まりそのものがしんどい場合は親戚の集まりがしんどいときの対処法と楽しむ工夫まとめ、義母との関係が中心なら義母の過干渉が育児を脅かす!解決法とコミュニケーション術も参考になります。

親戚のことで夫婦の仲が悪くなったとき

親戚付き合いの相談で、いちばん深いところにあるのがこれだと思います。相手の親戚が原因なのに、けんかをするのは夫婦。冒頭の司法統計で「家族親族と折り合いが悪い」が年4,000件以上挙がっているのは、この段階まで進んだ夫婦です。

なぜ夫婦の問題に変わってしまうのか

  • 親族を否定されると、自分が否定された気になる:「あなたのお母さんが」と言われた瞬間、内容ではなく「責められた」と受け取ってしまいます
  • どちらが我慢するかの取り合いになる:片方が我慢し続けると、我慢していない側が「気にしすぎ」に見えてきます
  • 血のつながっている側が動かない:自分の親には言いにくい。その結果、義理の側が矢面に立つことになります

どれも、相手が冷たいから起きるわけではありません。役割が決まっていないから起きます。

先に決めるのは「親戚をどうするか」ではない

順番を間違えると、いつまでも噛み合いません。先に決めるのは、二人がどうしたいかのほうです。方針が決まっていないまま親戚に向き合うと、その場その場で判断が変わり、相手にも伝わらず、家に帰ってから「なんであのとき」が始まります。

決めておくと楽になるのは、この3つです。

  1. 会う頻度の上限:年に何回まで、泊まるか泊まらないか
  2. 誰が窓口になるか:血のつながっている側が連絡も断りも引き受ける
  3. その場で返事をしないこと:「持ち帰って相談します」で一度止める

3が効きます。その場で決めないと約束しておけば、どちらかが勝手に引き受けて後でもめる、という形がなくなります。

言い方を1つ変えるだけで変わる

同じ内容でも、主語を変えると受け取られ方が変わります。

言いがちな言い方 なぜこじれるか 言い換え
あなたのお母さん、いつもああだよね 相手の親を否定=相手を否定と受け取られる この前の集まり、私はしんどかった
あなたの親でしょ、何とかしてよ 丸投げに聞こえて、防御に入られる 連絡は任せたい。内容は一緒に決めたい
うちの親は悪くない 正しさの勝負になり、話が止まる 悪いかどうかより、これからどうするか決めたい
気にしすぎだよ 感じ方を否定されると、相談されなくなる そう感じたんだね。何が一番きつかった?

コツは親戚の評価をしないことです。「いい人か悪い人か」を議論すると、どちらかが親を守る側に回ります。話すのは「自分がどう感じたか」と「次にどうするか」の2つだけにします。

それでも噛み合わないとき

二人で話すと感情が先に立つ、という段階になったら、話し合いの場を外に借りる方法があります。家庭裁判所の夫婦関係調整調停(円満)で、収入印紙1,200円分と郵便切手で申し立てができます。離婚を決めた人だけの手続きではありません。

手続きの中身はお見合い結婚を後悔しているとき|一番多い理由と、離婚以外の選択肢実家に帰った妻に会う方法|連絡がつかないときの3つの順序で詳しく書いています。

なお、言い合いのなかで暴力や、それに近い威圧が出ている場合は別です。話し合いを試みる前に、DV相談+(0120-279-889、24時間受付)か、お近くの配偶者暴力相談支援センターにつながる #8008 に相談してください。

相手が引かないときの手続き

断っても訪問が続く、財産のことでもめている、といった場合に使える手続きがあります。親族関係調整調停です。

裁判所の説明では「親族間において、感情的対立や親などの財産の管理に関する紛争等が原因となるなどして親族関係が円満でなくなった場合」に利用でき、調停では事情を聴いたうえで「解決案を提示したり、解決のために必要な助言をします」とされています。

項目 内容
費用 収入印紙1,200円分+連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なる)
申立てできる人 相手方と親族関係にある者
申立先 相手方の住所地の家庭裁判所、または当事者が合意で定める家庭裁判所
必要書類 申立書およびその写し1通、進行に関する照会回答書、送達場所等届出書

費用は収入印紙1,200円分です(出典:親族関係調整調停|裁判所)。

ここまでする必要がある人は多くありませんが、「話し合う場を用意する方法がある」と知っておくだけでも違います。どうにもならないと思っていた状態に、選択肢が1つ増えます。

相談先

一人で抱えなくて構いません。

  • 法テラス・サポートダイヤル 0570-078374:法的なトラブルについて、適切な法制度や関係機関(法律相談・公的機関窓口等)を紹介してくれます。受付は平日9時から21時、土曜9時から17時(祝日・年末年始を除く)。利用料は無料で、通話料は発信者の負担です。インターネットを使うIP電話やプリペイド携帯、海外からは 03-6745-5600(出典:お電話でのお問合せ|法テラス
  • 家庭裁判所:調停の申し立て方や、必要な切手の金額の確認先
  • お住まいの自治体の家庭相談窓口:法的な手続きの前に話を聞いてもらいたい段階で使えます

まとめ:覚えておきたい3つのポイント

  • 親戚付き合いがしんどいと感じるのは、おかしなことではない。家庭裁判所に持ち込まれる夫婦の申立て動機にも「家族親族と折り合いが悪い」が年4,000件以上挙がっている
  • 法律が定めているのは扶養の義務で、日常の付き合いではない。訪問も集まりも連絡も、法律上の義務ではないので、減らすことを後ろめたく思わなくていい
  • やめるか続けるかの二択ではない。頻度と深さを自分で決めるのが現実的な落としどころ。断り方は理由を短く、続けるなら年間の予定を先に置く

情報源(2026年7月時点で確認):e-Gov法令検索「民法」第877条、裁判所「親族関係調整調停」、裁判所「令和6年司法統計年報 家事編」第19表、法テラス「お電話でのお問合せ(法テラス・サポートダイヤル)」

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