ロマンス詐欺は、SNSやマッチングアプリで知り合った相手に恋愛感情や親近感を持たせて、お金をだまし取る詐欺です。警察庁の確定値では、令和7年(2025年)の被害は5,645件・546.4億円。前年より件数が47.6%増えました。「海外の軍人を名乗る相手にだまされる女性」というイメージが強いのですが、実際は相手の約6割が日本国内を名乗り、被害者の約6割は男性です。この記事では、警察庁の統計をもとに、出会い方から金銭要求への変わり目、送ってしまったあとの対応までをまとめます。
まず短い動画で、ロマンス詐欺の全体像を確認してください。
ロマンス詐欺とは
警察庁は「SNS型ロマンス詐欺」を次のように定義しています。
SNS等を通じて対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ、恋愛感情や親近感を抱かせて金銭等をだまし取る詐欺
出典:令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)|警察庁
大事なのは「対面することなく」と「恋愛感情や親近感」の2つです。会わないまま関係だけが深まり、その気持ちを使ってお金を求められる。これがロマンス詐欺の骨格です。
投資詐欺とは、警察庁が定義で分けている
よく似た「SNS型投資詐欺」は、同じ資料で「投資金名目やその利益の出金手数料名目等で金銭等をだまし取る詐欺(SNS型ロマンス詐欺に該当するものを除く)」と定義されています。
つまり恋愛感情や親近感を持たせたなら、投資の話が出てきてもロマンス詐欺に分類されます。ここは後で効いてくるので覚えておいてください。
令和7年の被害規模
警察庁が令和8年(2026年)5月22日に発表した確定値では、次のとおりです。
- 認知件数 5,645件(前年から1,821件増、+47.6%)
- 被害額 546.4億円(前年から145.5億円増、+36.3%)
- 検挙は261件・173人
件数も被害額も増え続けています。参考までに、同じ年のSNS型投資詐欺は9,523件・1,288.0億円で、2つを合わせると1,834.3億円。特殊詐欺全体の1,423.1億円を上回ります。
「国際ロマンス詐欺」という思い込みが危ない
この詐欺を「海外の相手にだまされる話」だと思っていると、目の前で起きても気づけません。確定値の内訳は、よく知られたイメージとかなり違います。
相手の約6割は「日本国内」を名乗る
被疑者が詐称した身分(地域)は、日本(国内)が3,461件で認知件数の約6割を占めます(前年比+67.5%)。東アジアや東南アジアなど海外を名乗るケースもありますが、多数派ではありません。
「日本人だから安心」は理由になりません。
被害者の約6割は男性
性別ごとの内訳はこうです。
- 男性 3,633件・328.7億円(前年比 件数+50.4%、被害額+32.1%)
- 女性 2,012件・217.7億円(前年比 件数+42.8%、被害額+43.1%)
件数でも被害額でも、男性が全体の約6割です。年代は男女とも40代から60代が多く、最も多いのは男性の50代で1,100件、次いで男性の60代が903件。女性も50代の620件が最多です。
「若い人が恋愛に不慣れで引っかかる」話でもありません。働き盛りから定年前後の年代が中心です。
どこで出会い、どう近づいてくるか
出会いの場所は、統計ではっきりしています。
最初に接触するツール
- マッチングアプリ 1,846件(32.7%)
- Instagram 1,288件(22.8%)
- Facebook 1,049件(18.6%)
- TikTok 471件(8.3%)
- その他のSNS 820件(14.5%)
上位3つで全体の約7割です。マッチングアプリだけでなく、InstagramとFacebookを合わせると4割を超える点は見落とされがちです。恋愛を探していないつもりの場所からも始まります。
接触のしかたは、ほぼダイレクトメッセージ
当初の接触手段はダイレクトメッセージが5,238件で92.8%。9割以上が個別のメッセージから始まります。
投資詐欺のほうは「バナー等広告」が39.7%を占めるのに対し、ロマンス詐欺はほぼ全部が1対1のやりとりから入ります。広告を踏んだ覚えがなくても関係ありません。
相手が名乗る職業の1位は「投資家」
被疑者が詐称した職業は、投資家627件(+44.5%)、会社員507件、会社役員378件の順です。医療関係や芸術・芸能関係もみられます。
恋愛の入口なのに、名乗る職業の最多が投資家。この時点ですでにお金の話への布石が置かれています。
なぜ信用してしまうのか
だまされる人が特別に不注意なわけではありません。統計に出ている特徴を並べると、信用が生まれる形が見えてきます。
出会った場所と、お金の話をする場所が違う
出会いはマッチングアプリ(32.7%)やInstagram(22.8%)です。ところが被害時の連絡ツールはLINEが5,294件で93.8%。ほとんどの被害で、やりとりの場が最初のアプリから移っています。
会わないまま、やりとりだけが続く
警察庁の定義は「対面することなく、交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ」です。会わないことと、連絡を重ねることの両方が条件に入っています。
数週間から数か月やりとりが続けば、会ったことがなくても「知っている人」になります。時間をかけること自体が手口の一部です。
途中から投資話に変わるケース
冒頭で触れた定義の話が、ここで効いてきます。
相手が名乗る職業の最多は投資家でした。関係ができたあと、「自分がやっている取引を教える」「二人の将来のために増やそう」という流れに変わることがあります。
このとき、多くの人は「これは投資詐欺だろうか」と迷います。警察庁の分類では答えは決まっていて、恋愛感情や親近感を抱かせたうえでの被害は、投資の名目でもロマンス詐欺です。投資詐欺の定義から明示的に除外されています。
読者にとって大事なのは分類名ではなく、次の一点です。
会ったことのない相手から出てきたお金の話は、恋愛の続きに見えても、投資の話に見えても、同じ扱いでよい。
SNSの投資グループに誘導される形については 勝手に追加されたLINE投資グループは要注意 で、著名人をかたる広告から始まる形については 有名人の「無料で投資指導」広告は要注意 で扱っています。
お金はどう渡されているか
恋愛の続きでも投資の名目でも、最後はお金を渡す段階になります。渡し方の内訳は確定値に出ていて、暗号資産が急増しています。
- 振込型 3,055件(54.1%)・276.0億円(件数+8.2%、被害額は-11.1%)
- 暗号資産送信型 2,177件(38.6%)・247.7億円(件数+177.0%、被害額+189.7%)
- その他 413件(7.3%)
振込型のなかの暗号資産振込と合わせると、実質的に暗号資産で渡されたものが認知件数の40.4%、被害額の48.6%を占めます。前年からそれぞれ14.4ポイント、22.2ポイント増えました。
これは後の「取り戻せるかどうか」に直結します。詳しくは「お金を送ってしまったら」で書きます。
見分け方
相手の話の中身で見破ろうとすると難しくなります。やりとりの形を見てください。統計に出ている特徴と重なるほど、危険度が上がります。
確認1:会ったことがあるか
一度も対面していないことは、警察庁の定義に含まれる特徴の一つです。ビデオ通話をしたかどうかは判断材料になりません。顔も声もいまは作れます(AIで作られた詐欺の見分け方)。
確認2:早い段階でLINEに誘われたか
被害の93.8%がLINEでのやりとりでした。出会ったアプリから別のアプリへ移そうとする流れは、統計に出ている形と同じです。
確認3:相手の職業が投資家・会社役員か
詐称される職業の上位です。恋愛の場面で資産や運用の話が自然に出てくるなら、警戒してよい理由になります。
確認4:暗号資産・海外送金を指定されたか
正当な理由で恋人が暗号資産での送金を指定してくることは、まずありません。ここまで来たら送らないでください。
お金を送ってしまったら
まず、送金や送信をすぐ止めます。追加の請求が来ても払わないでください。「これを払えば戻ってくる」は、被害を増やす言い方です。
相談先
- 警察相談専用電話「#9110」 — 事件にするか迷う段階でも相談できます。急を要するときは110番
- 消費者ホットライン「188」 — 最寄りの消費生活センターにつながります
- 振込先の金融機関 — 口座凍結の手続きがあります。早いほど残高が残っている可能性があります
取り戻せる見込みは、渡し方で大きく変わる
振り込め詐欺救済法は、犯人の預金口座を凍結して、残っているお金を被害者に分配する仕組みです。ロマンス詐欺も対象に含まれますが、対象になるのは国内の銀行口座への振込分です。
ここで、さきほどの渡し方の数字が効いてきます。被害額の48.6%は実質的に暗号資産で渡されていて、この部分はこの法律の枠組みに乗りません。
暗号資産で送ってしまった場合は、より戻りにくいと考えて、その分早く警察に相談してください。手続きと注意点は 振り込め詐欺救済法の返金率は? にまとめています。
家族が被害に遭っているとき
本人は、だまされているとは思っていません。恋愛を否定されたと受け取られると、相手のほうを信じて話をしなくなります。
説得より先に、数字を見せてください。被害者の6割が男性で、40代から60代が中心で、相手の6割が日本国内を名乗っている。「あなたが特別に間抜けだからではない」と伝わる形のほうが、話が続きます。
まとめ:覚えておきたい3つのポイント
- 会ったことのない相手から出るお金の話は、恋愛でも投資でも同じ扱いでよい。警察庁の定義でも、恋愛感情を持たせたうえでの被害は投資名目でもロマンス詐欺に分類される
- 思い込みを外す。相手の約6割は日本国内を名乗り、被害者の約6割は男性、中心は40代から60代
- 暗号資産で送ると戻りにくい。被害額の48.6%が実質暗号資産で、振り込め詐欺救済法の対象は国内の銀行振込分。送ってしまったらすぐ#9110へ
情報源:警察庁 組織犯罪対策第二課・生活安全企画課「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日発表)、警察相談専用電話「#9110」、消費者ホットライン「188」、振り込め詐欺救済法、預金保険機構
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