
仕事のストレスは、気の持ちようで片づく話ではありません。厚生労働省の調査では、仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスがある労働者は68.3%、内容は「仕事の量」が43.2%で最多でした(令和6年)。この記事では、勤務中にできること、持ち帰らないための区切り方、長く続けるための生活の整え方を、調査の数字とあわせて整理します。
何がストレスになっているかを見る
厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスとなっている事柄がある労働者は68.3%でした。その内容は次のとおりです(主なもの3つ以内)。
| 強いストレスの内容 | 割合 |
|---|---|
| 仕事の量 | 43.2% |
| 仕事の失敗、責任の発生等 | 36.2% |
| 仕事の質 | 26.4% |
年齢別では30歳代73.3%、40歳代73.0%で高く、就業形態別では正社員74.6%、契約社員73.0%となっています。令和5年は82.7%でしたが、設問の形式を変えているため前年との単純な比較はできないと調査自体が注記しています。
自分の場合はどれに当たるかを分けてみてください。量なのか、責任なのか、内容なのかで、打つ手が変わります。量の問題に対処法の工夫で応じても、量そのものは減りません。
就業形態でも差があります。正社員74.6%、契約社員73.0%に対し、パートタイム労働者は43.5%、派遣労働者は54.1%でした。内容の内訳も形態ごとに違い、派遣労働者では「雇用の安定性」が54.7%、契約社員では「会社の将来性」が38.8%と、正社員とは上位の項目が変わります。
同じ「仕事のストレス」でも、中身は立場によって違うということです。他の人の対処法がそのまま当てはまらないことがあります。
ストレスの仕組みを分けて考える
厚生労働省「こころの耳」は、日常生活でストレッサー(原因になる出来事)を経験すると、心理面・身体面・行動面にストレス反応が現れると説明しています。そして、対処能力を上回るストレッサーを経験したり、ストレッサーが長く続いたりすると反応が慢性化し、活気が低下してくるとしています。
ストレッサーによる悪影響を和らげるための工夫はコーピング(対処)と呼ばれています。ここから分かるのは、手を入れられる場所が2つあるということです。
- 出来事の側(仕事量を調整する、担当を変えてもらう、期限を相談する)
- 反応の側(休憩の取り方、体の状態を整える、受け取り方を変える)
対処法の工夫だけで扱おうとすると、出来事の側が変わらないまま消耗します。量が問題なら、まず量の話ができる相手を探すほうが順番としては先です。
勤務中にできること
その場でできるのは、区切りを入れる部分です。
- 短い休憩を決まった間隔で入れる(疲れてから取ると、回復に時間がかかります)
- 席を離れる(同じ場所にいると、作業から離れた感覚になりません)
- 作業を小さく区切る(終わりが見えない状態が続くほど、負担を感じやすくなります)
- その日に終わらないことを前提に区切る(全部終わらせる形にすると、毎日未達になります)
集中が切れたまま続けても効率は上がりません。短く離れて戻るほうが、結果として進むことがあります。時間を区切って作業と休憩を繰り返す方法として、ポモドーロテクニックのような形もあります。
休憩の取り方で迷う場合は、時間ではなく行動で決める方法もあります。「メールを5件処理したら席を立つ」のように、区切りを作業の側に置く形です。時計を見ながら我慢する形にすると、休憩そのものが負担になります。
やることの並べ方
量が多い状態では、どこから手をつけるかで負担の感じ方が変わります。
- 締め切りのあるものを先に並べる(動かせない予定から埋めます)
- 5分で終わるものは、考えずに先に片づける(抱えている件数が減ると、把握しやすくなります)
- 着手できない仕事は、止まっている理由を書く(情報が足りないのか、判断待ちなのか。人に聞けば動くものもあります)
- 自分が判断できないものは、抱えずに戻す
やることの一覧が長いままだと、見るたびに負担になります。件数を減らすことと、順番を決めることは別の作業です。減らせないなら、せめて順番だけでも固定しておくと、その都度の判断が要らなくなります。
持ち帰らないための区切り
勤務時間が終わっても、頭の中で仕事が続くことがあります。
- 終業時に、翌日やることを書き出す(覚えておく必要がなくなります)
- 帰り道に、同じ行動を挟む(1駅歩く、決まった店に寄る。切り替えの合図になります)
- 連絡を見る時間を決める(通知を切る時間帯を作る)
- 気になっていることを書き出す(頭の中で回している状態から出します)
書き出すのは、解決するためではありません。何を気にしているかが見えると、対処できるものとそうでないものが分かれます。明日やれば済むこと、自分では決められないこと、すでに終わったことに分けるだけでも、抱えている量が変わります。
終業後に仕事の連絡を確認し続けていると、区切りそのものが作れません。見る時間を決めておくほうが、見ないと決めるより実行しやすくなります。緊急の連絡が来る職場であれば、どの範囲が緊急かを職場側と共有しておく必要があります。
休みの日の過ごし方
休日に何もせずに過ごしても、疲れが取れた感覚にならないことがあります。
- 起きる時間を平日と大きくずらさない(ずれるほど、翌週の朝がつらくなります)
- 予定を詰めない(休むための予定で埋まると、休みになりません)
- 仕事に関する連絡を見る時間を決める(見ないと決めるより、時間を決めるほうが実行しやすくなります)
- 外に出る時間を作る(日光を浴びることは、睡眠の環境づくりにも関わります)
週末にまとめて回復しようとするより、平日の中に短い区切りを作るほうが、負担は溜まりにくくなります。1週間のうち、まったく仕事のことを考えない時間がどれだけあるかを見てみてください。
相談先を実際に使う
同じ調査では、ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.6%でした。相談できる相手は「家族・友人」68.6%、「上司」65.7%、「同僚」62.8%の順です。
ただし、実際に相談したことがある人は、相談できる人がいる労働者のうち74.7%にとどまります。男女別では男性69.4%、女性80.5%です。
実際に相談した相手は「家族・友人」62.1%、「上司」58.9%の順でした。男性は「上司」62.5%が最多、女性は「家族・友人」64.9%が最多です。
相手がいることと、実際に話すことは別だという数字です。「話せる人はいる」で止まっている状態なら、そこが動かせる部分になります。
睡眠を確保する
厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、ここ1か月で睡眠で休養がとれている人は74.9%で、平成21年からの推移では有意に減っています。1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性38.5%・女性43.6%で、男性の30〜50歳代、女性の40〜60歳代では4割を超えています。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、良質な睡眠のための環境づくりとして次を挙げています。
- 日中にできるだけ日光を浴びる(体内時計が調節され、入眠しやすくなる)
- 就寝の約1〜2時間前に入浴し、身体を温めてから寝床に入る
- 寝室にスマートフォンやタブレットを持ち込まず、できるだけ暗くして寝る
- できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠る
ガイドによると、就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモン(メラトニン)の分泌が始まります。それ以降に強い光を浴びると分泌が抑えられ、入眠が妨げられることが報告されています。
体を動かす時間
同じ国民健康・栄養調査では、運動習慣のある人は男性36.2%・女性28.6%でした(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続している人)。年齢別では男性の30歳代23.5%、女性の20歳代14.5%がもっとも低くなっています。
歩数の平均は男性6,628歩・女性5,659歩で、この10年で男女とも有意に減少しています。
新しく運動を始めるのが難しい場合でも、通勤の一部を歩く、昼休みに外に出るといった形なら組み込みやすくなります。
職場の側に要因があるとき
厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」(令和5年度)では、過去3年間にパワーハラスメントを受けたと答えた人が19.3%でした。受けた後の行動としてもっとも多かったのは「何もしなかった」で36.9%です。
勤務先がハラスメントを認識した後の対応も、パワハラでは「特に何もしなかった」が53.2%で最多でした。
社内で解決しない場合は、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」が使えます。相談は無料です。個人の対処法で扱う範囲を超えている場合があります。
状態が続くときは
厚生労働省は、気分の落ち込みや睡眠の問題などの症状が2週間以上続く場合には「うつ」が疑われるとして、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをすすめています。
職場に産業医や相談窓口がある場合は、そちらも使えます。眠れない、食べられない、仕事が手につかないといった状態が続いているなら、工夫を増やす段階ではありません。
まとめ
- 強いストレスがある労働者は68.3%。内容は仕事の量43.2%が最多。30歳代73.3%、40歳代73.0%で高い
- 手を入れられる場所は2つ。出来事の側と反応の側。量の問題に工夫で応じても量は減らない
- 相談できる人がいるのは94.6%だが、実際に相談した人は74.7%
- 睡眠で休養がとれている人は74.9%で減少傾向。6時間未満が男性38.5%・女性43.6%
- 職場の側に要因がある場合は外部の窓口へ。パワハラを受けた人の36.9%は何もしないまま終わっている
情報源:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」個人調査第17表・第18表・第19表、厚生労働省「こころの耳」ストレス軽減ノウハウ、厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」、厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要」(令和5年度委託事業)
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