スマートフォンに「警察署」から電話がかかってきたら、どうしますか。いま、実在する警察署の電話番号をそのまま表示させる詐欺が確認されています。警察庁は「相手方から教示された番号には、決して折り返さないでください」と呼びかけています。この記事では、番号が偽装される仕組みと、電話を切ったあとに何をすればいいかを、警察庁と警視庁の発表をもとにまとめました。
警察署の番号が表示されても、本物とは限らない
結論からお伝えします。着信画面に警察署の番号が出ていても、それだけでは本物かどうか判断できません。
警察庁は2025年3月25日に注意喚起を出し、「警察官をかたる特殊詐欺の犯人が、実在する警察署等の電話番号を偽装して表示させる手口を確認」したと公表しています(出典:警察に偽装した電話番号に注意!|警察庁)。
警視庁も、偽装される番号を具体的に挙げています。
着信画面に、警視庁の代表電話(03-3581-4321)や末尾が(0110)の警察署代表番号を偽装表示させ、警察官からの電話と信用させる手口です
出典:警視庁「警察官等をかたる詐欺」
つまり、偽装の対象になっているのは末尾が「0110」の警察署代表番号と、警視庁の代表電話です。着信画面に0110で終わる番号が出ると本物に見えますが、その番号こそ狙われています。自分の地域の警察署だから安全、ということもありません。表示される番号は書き換えられます。
電話がかかってきたときの対処
警察庁が示している対処は、はっきりしています。
電話を切って警察相談専用電話(#9110)に御相談ください。相手方から教示された番号には、決して折り返さないでください
出典:警察庁「警察に偽装した電話番号に注意!」(2025年3月25日)
順に書き出すと、次のようになります。
- 何を言われても、いったん電話を切る
- 相手が教えた番号には折り返さない(その番号も偽装されている可能性があります)
- 家族や知人に相談する
- 自分で調べた警察署の番号か、#9110(警察相談専用電話)にかける
2が肝心なところです。「あとで折り返します」と言って切るだけでは足りません。折り返す先を相手に決めさせないことが、この手口に対する分かれ目になります。
警視庁は、切る前に相手の「所属、担当部署、氏名、内線番号」を確認しておき、最寄りの警察署に連絡することも挙げています。聞いた内容が実在するかどうかは、自分でかけ直した先で確かめられます。
「切らないでください」「切ったら逮捕されます」と言われても、切って構いません。本物の警察であれば、こちらから警察署にかけ直して確認されることを拒む理由がありません。
なお警察庁は、対策として国際電話番号からの着信を拒否することも挙げています。「+」から始まる番号に心当たりがないなら、入口を1つ塞げます。申し込み先も示されています。
- 固定電話:国際電話不取扱受付センターに申し込む(0120-210-364)
- 携帯電話:国際電話の着信規制ができるアプリを使う
詐欺師はどう話を進めるのか
ニセ警察詐欺には決まった流れがあります。知っておくと、途中で気づけます。
よくある会話の流れ
1. 薬局や通信会社を装った電話がかかってくる
「薬局ですが、あなたの保険証が不正に使われています。すぐ警察におつなぎしますね」
2. 警察官を名乗る相手に「転送」される
「○○県警の△△です。あなたの口座が資金洗浄に使われています」
3. 不安をあおって送金を指示される
「逮捕状が出ています。身の潔白のため、指定口座に全財産を送金してください」
ここで覚えておきたい線引きが1つあります。捜査のために口座へお金を送らせることは、警察の手続きにはありません。送金を求められた時点で、詐欺と判断して構いません。
なぜ本物の番号が表示されるのか
「番号が本物だった」という点が引っかかる方もいると思います。ここには技術的な仕組みがあります。
発信者番号は書き換えられます。これを「スプーフィング」と呼びます。実際には海外から発信していても、着信画面に日本の警察署の番号を表示させることができます。
だから、着信画面は本物かどうかの判断材料になりません。番号を確かめるなら、かかってきた番号ではなく、自分で調べた番号を使うことになります。
電話のあとに続く手口
電話で終わりではありません。信じ込ませるために、続きが用意されています。警察庁と警視庁が注意喚起しているものを挙げます。
ビデオ通話で身分証を見せる
電話のあと、ビデオ通話に切り替えて制服姿や身分証を提示し、本物の捜査員に見せかける手口があります。実際に、警察官を名乗る人物から「あなたの口座が犯罪に利用されている可能性がある」と電話を受け、後日「大阪地検特捜部の検察官」を名乗る人物からビデオ通話を受けて身分証を提示され、現金をだまし取られた事例が報告されています。
警察庁はこう明言しています。
警察官や検察官が、個人のスマートフォンに突然ビデオ通話をかけることはありません!!
出典:警察庁「ビデオ通話を悪用した“偽警察官・検察官”の詐欺に注意!!」(2025年4月28日)
警視庁も「警察官がSNSやビデオ通話で連絡を取ることはありません」としています。画面に制服や身分証が映っていても、判断材料にはなりません(出典:ビデオ通話を悪用した“偽警察官・検察官”の詐欺に注意!!|警察庁、警察官等をかたる詐欺|警視庁)。
ニセの警察ウェブサイトに誘導する
もう1つは、偽のサイトを使うものです。警察庁の注意喚起では、次の流れが確認されています。
- 「詐欺事件の捜査」「口座売却への関与」「逮捕状の発行」などを口実に接触する
- ホテルに宿泊させて、家族との連絡を絶つよう指示する
- ビデオ通話でURLと受理番号を伝え、ニセのサイトへ誘導する
- 「口座の識別番号確認」と称して複数回の振込をさせる
- 受理番号を入力させて、逮捕状のような書類を画面に表示する
同じくニセの警察官を名乗り、振込ではなく金(きん)の延べ棒を買わせて自宅の玄関前に置かせる手口も確認されています。警察庁が公表した内容は【警察庁発表】金の延べ棒詐欺の手口と見分け方|ニセ警察に「金を玄関前に置いて」と言われたらにまとめています。
別の入り方として、「高速道路料金や交通反則金が未納」というメールのリンクから、クレジットカード情報などを入力させる偽サイトに誘導する形もあります(出典:ニセの警察ウェブサイトに誘導する手口|警察庁)。
ここで注目したいのは、家族との連絡を絶たせようとする点です。相談されると成立しない手口なので、犯人側は必ずそこを塞ぎに来ます。逆に言えば、家族に相談されるのを嫌がる相手は、それ自体が危険信号です。詳しくは詐欺師は「家族に相談したい」をどうやって阻止するのかにまとめてあります。
2025年の被害はどのくらいか
警察庁が2026年6月5日に公表した令和7年(2025年)の確定値では、次のようになっています。
| 区分 | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 特殊詐欺 全体 | 27,832件 | 約1,423.1億円 |
| うちニセ警察詐欺 | 11,014件 | 1,005.0億円 |
| 前年比(全体) | +6,789件(+32.3%) | +704.3億円(+98.0%) |
被害額は1年で約2倍になりました。ニセ警察詐欺は認知件数で特殊詐欺全体の39.6%を占めます。さらに、警察官などを装う手口が含まれる「オレオレ詐欺」14,489件のうち10,859件(74.9%)がニセ警察詐欺です。
警察庁はニセ警察詐欺を「警察官等をかたり捜査(優先調査)名目で現金等をだまし取る手口」と定義しています(出典:令和7年における特殊詐欺等の認知・検挙状況等について(確定値)|警察庁)。この記事で扱っている手口が、いまの特殊詐欺の主流にあたります。
かかってくる前にできること
地元警察署の番号を登録しておく
いざというときに調べる手間をなくしておきます。
- お住まいの自治体名と「警察署」で検索する
- 警察署の公式サイトで代表番号を確認する
- スマートフォンの連絡先に「地元警察署」として登録する
- #9110 もあわせて登録しておく
登録してあれば、着信画面の番号と見比べるのではなく、登録した番号から自分でかけるという動きが取れます。
迷惑電話を自動で止める
そもそも着信させない方法もあります。警察庁が推奨しているアプリを使う手が詐欺電話を自動ブロック!警察庁推奨の無料アプリの入れ方にまとめてあります。国際電話を使わない場合は海外と電話しないなら今すぐ「#みんとめ」!国際電話詐欺の無料ブロック設定も合わせて設定できます。
家族に伝えるときの3つのポイント
この手口は、知っているかどうかで結果が変わります。誰に伝えるかで迷うなら、警察庁の統計では特殊詐欺の被害者のうち51.3%が65歳以上で、年代の構成比では80代がもっとも多い(約21.3%)という数字があります(令和7年1月〜12月。ニセ警察詐欺だけを切り出した年代別は公表されていません)。
伝える内容は3つに絞ると覚えてもらいやすいです。
- 着信画面に警察署の番号が出ても、それだけでは本物と判断できない
- 口座への送金を求められたら詐欺
- いったん切って、相手が教えた番号ではなく #9110 か自分で調べた番号にかける
不安なときの相談先
- 警察相談専用電話 #9110:犯罪かどうか判断が付かない段階の相談。緊急のときは110番
- 消費者ホットライン 188:契約や請求のトラブル。最寄りの消費生活センターにつながります
もう振り込んでしまったとき
諦める前に動いてください。振込先の金融機関と警察にすぐ連絡します。口座が凍結できれば、振込詐欺救済法にもとづいて被害の一部が返ってくる場合があります。手続きの流れは振り込め詐欺の被害金は戻る?振り込め詐欺救済法の手順と注意点にまとめてあります。
まとめ:覚えておきたい3つのポイント
- 実在する警察署の番号を偽装して表示させる手口が、警察庁と警視庁によって確認されている。着信画面では判断できない
- 2025年の特殊詐欺は27,832件・約1,423.1億円で、うちニセ警察詐欺が11,014件・1,005.0億円。被害額は前年の約2倍
- 対処は「切る」「相手が教えた番号に折り返さない」「家族に相談する」「#9110 か自分で調べた番号にかける」
情報源(2026年7月時点で確認):警察庁「警察に偽装した電話番号に注意!」(2025年3月25日)、警察庁「ビデオ通話を悪用した“偽警察官・検察官”の詐欺に注意!!」(2025年4月28日)、警察庁「ニセの警察ウェブサイトに誘導する手口」、警察庁「令和7年における特殊詐欺等の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年6月5日公表)、警視庁「警察官等をかたる詐欺」、警察相談専用電話「#9110」、消費者ホットライン「188」
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