訪問介護は、訪問介護員(ホームヘルパー)が自宅に来て、入浴や食事などの介助や、掃除・調理といった家事を行うサービスです。大きく身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3つに分かれていて、どれにあたるかで時間の区切りも費用も変わります。この記事では、その違いと費用の目安、頼むまでの流れをまとめます。
訪問介護とは
介護保険法の第8条第2項は、訪問介護を「その者の居宅において介護福祉士その他政令で定める者により行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話」と定めています。
ここでいう「居宅」には、有料老人ホームや軽費老人ホームの居室も含まれます。自宅でなければ使えない、というものではありません。
来てもらえる時間や回数は、ケアマネジャーが作るケアプランで決まります。好きなときに呼べるサービスではなく、あらかじめ曜日と時間を決めて利用するのが基本の形です。
3つの種類
何をしてもらうかによって、次の3つに分かれます。
身体介護
体に直接ふれて行う介助です。厚生労働省の通知(老計第10号)は、身体介護を3つに整理しています。
- 利用者の身体に直接接触して行う介助(そのために必要な準備や後かたづけを含む)
- 利用者の自立支援・重度化防止のために、利用者と共に行うサービス
- 専門的な知識・技術をもって行うサービス(嚥下が難しい人のための調理など)
具体的には、トイレやおむつの介助、食事の介助、清拭や入浴の介助、着替え、体の向きを変えること、移動や通院の付き添いなどです。
生活援助
掃除、洗濯、調理、買い物など、本人の代わりに行う家事です。同じ通知は、生活援助を「本人の代行的なサービス」と位置づけています。
ここで知っておきたいのが、生活援助には条件があることです。通知は、生活援助を「利用者が単身、家族が障害・疾病などのため、本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるもの」としています。
同居している家族がいる場合の扱いについては、国が別の通知を出しています。同居家族がいることだけを理由に、一律に利用できないと決めることはできません。判断は個別に行われます。
通院等乗降介助
通院のために、車の乗り降りを介助するサービスです。乗車前と降車後の移動の介助、受診の手続きなどが含まれます。
これは「介護タクシー」と呼ばれることがありますが、運賃そのものは介護保険の対象外です。介護保険から支払われるのは介助の部分で、車の運賃は別に支払います。
「一緒にやる」は身体介護にあたる
誤解されやすいのがここです。掃除や調理を本人と一緒にやることは、生活援助ではなく身体介護として扱われます。
令和3年の改定で、老計第10号の「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」という項目が大きく増えました。たとえば次のようなものが、身体介護として示されています。
- 利用者と一緒に手助けや声かけ、見守りをしながら行う掃除、整理整頓
- 洗濯物を一緒に干したりたたんだりして、自立支援と転倒予防をあわせて行う
- ゴミの分別が分からない利用者と一緒に分別し、ルールを思い出してもらう
- 車イスでの移動介助を行って店に行き、本人が自ら品物を選べるよう援助する
- 本人が自分で服薬できるよう、直接介助はせずに側で見守り、服薬を促す
「ヘルパーが代わりにやる」のではなく「本人ができることを続けられるようにする」形です。
ただし、本人と一緒に行えば何でも身体介護になるわけではありません。通知は、これらを本人の自立支援・重度化防止に資するものとしてケアプランに位置付けられたものとしています。ケアマネジャーがその必要性を認めて計画に入れていることが前提です。
なお、買い物の同行は使えない、と書いている古い記事がありますが、現在は上のとおり明記されています。
できること・できないことの線引きは、訪問介護でできること・できないことで詳しくまとめています。
1回の時間はどのくらい
時間は、あらかじめ決められた区切りで数えます。
- 身体介護 ― 20分未満から。20分以上30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上と続きます
- 生活援助 ― 20分以上45分未満、45分以上の2つです。身体介護と違って、20分未満の区分はありません
- 通院等乗降介助 ― 時間ではなく、1回いくらで数えます
「20分だけ来てもらって薬を飲むのを見てもらう」といった短い利用は、身体介護なら可能です。一方、生活援助は20分以上が前提になります。
費用の目安
介護保険のサービス費は、単位という独自の数え方で決まっています。令和8年6月時点の基本部分は次のとおりです。
| 種類 | 時間 | 単位 | 10円換算の目安 | 1割負担の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 身体介護 | 20分未満 | 163 | 約1,630円 | 約163円 |
| 身体介護 | 20分以上30分未満 | 244 | 約2,440円 | 約244円 |
| 身体介護 | 30分以上1時間未満 | 387 | 約3,870円 | 約387円 |
| 生活援助 | 20分以上45分未満 | 179 | 約1,790円 | 約179円 |
| 生活援助 | 45分以上 | 220 | 約2,200円 | 約220円 |
| 通院等乗降介助 | 1回につき | 97 | 約970円 | 約97円 |
身体介護の1時間以上は567単位からで、30分増すごとに82単位が加わります。
見方の順序は、次のようになります。
- サービスごとに単位が決まっている
- 1単位を10円として計算すると、上の表の金額になる
- その1割から3割が自己負担の基本的な目安になる
- 実際の額は、地域による単価の違いと、事業所が算定する加算で変わる
負担が1割か2割か3割かは、市区町村から届く介護保険負担割合証に書かれています。割合の決まり方は介護保険とはでまとめています。
実際の利用料には、事業所が算定する加算や地域による単価の違いが反映されるため、ここで示す金額は基本報酬から計算した目安です。都市部では1単位あたりの単価が10円より高くなります。契約の前に、事業所から具体的な金額の説明を受けてください。
頼むまでの流れ
- 要介護認定を受ける ― 市区町村に申請します
- ケアマネジャーに相談する ― 要介護1から5なら居宅介護支援事業所のケアマネジャー、要支援1・2なら地域包括支援センターが窓口です
- ケアプランに位置づけてもらう ― どの曜日の何時に、何分、どんな内容で来てもらうかを決めます
- 事業所を選んで契約する ― ケアマネジャーが候補を出してくれます。見学や面談をしてから決められます
- 訪問介護計画を作ってもらう ― 事業所のサービス提供責任者が、具体的な手順を計画にします
要支援1・2と認定された場合、訪問介護は市区町村が行う総合事業の訪問型サービスになります。内容や利用できる回数は市区町村ごとに違うので、地域包括支援センターで確認してください。
訪問看護との違い
名前が似ていますが、別のサービスです。
| 訪問介護 | 訪問看護 | |
|---|---|---|
| 行う人 | 介護福祉士など | 看護師など |
| 内容 | 入浴・排せつ・食事等の介護、日常生活上の世話 | 療養上の世話、診療の補助 |
| 利用の条件 | ケアプランに位置づける | 主治医が必要と認めたものに限る |
介護保険法の第8条第4項は、訪問看護について「主治の医師がその治療の必要の程度につき厚生労働省令で定める基準に適合していると認めたものに限る」と定めています。医師の判断が入る点が、訪問介護との大きな違いです。
訪問介護員ができる医療的な行為には決まりがあり、できる範囲は国の通知で示されています。この線引きも訪問介護でできること・できないことでまとめています。
まとめ
- 訪問介護は身体介護・生活援助・通院等乗降介助の3つ。どれにあたるかで時間の区切りも費用も変わる
- 生活援助には条件がある。本人や家族が家事を行うことが困難な場合に行われるサービスと通知に書かれている
- 「一緒にやる」は身体介護。一緒に掃除する、買い物に同行して本人が選べるよう援助する、などが通知に明記されている
- 生活援助に20分未満の区分はない。短時間の利用は身体介護で組む
- 費用は単位で決まる。10円換算が目安で、その1〜3割が自己負担。地域の単価と事業所の加算で変わる
- 要支援1・2は総合事業の訪問型サービス。内容は市区町村ごとに違う
介護保険制度や介護報酬は改正されることがあります。このページは2026年10月時点で確認できる法令・厚生労働省資料に基づいています。単位数は令和8年6月時点のもので、今後の制度改正によって変わる可能性があります。
情報源:介護保険法第8条、厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和8年6月改定箇所)、厚生労働省「訪問介護におけるサービス行為ごとの区分等について」(平成12年3月17日老計第10号)、厚生労働省「同居家族等がいる場合における訪問介護サービス等の生活援助の取扱いについて」(平成21年12月25日老振発1224第1号)