退院して家で療養する親に、看護師さんに来てもらえないか。そんなときに使えるのが訪問看護です。看護師などが家に来て、療養上の世話や、医師の指示にもとづく診療の補助をします。使うには主治医の文書による指示が必要です。要介護・要支援の認定を受けている人は、原則として介護保険で使い、病気や状態によっては医療保険で使うことになります。この記事では、誰が来るか、主治医の指示、介護保険と医療保険の分かれ目、夜間や急なときの連絡、費用の考え方、頼むまでの流れをまとめます。
訪問看護とは
介護保険法の第8条第4項は、訪問看護を、居宅要介護者について「その者の居宅において看護師その他厚生労働省令で定める者により行われる療養上の世話又は必要な診療の補助」と定めています。
対象は、主治の医師が必要と認めた人です。介護保険法施行規則の第6条は、その基準を、「病状が安定期にあり」、家で療養上の世話や必要な診療の補助を受ける必要があること、としています。当てはまるかどうかは主治医が判断します。医療的な管理が必要だからという理由だけで、訪問看護を使えないわけではありません。急に悪くなったときの扱いは、下の「医療保険になる主な場合」で説明します。
訪問看護は、訪問看護ステーションのほか、病院や診療所からも行われます(厚生労働省 介護給付費分科会の資料)。要支援1・2の人の場合は「介護予防訪問看護」という名前の介護予防サービスになります(介護保険法第8条の2)。
誰が来るか
家に来るのは、看護師のほか、施行規則の第7条が定める次の職種の人です。
- 保健師
- 准看護師
- 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士 ― リハビリの専門職
どの職種の人が来るかは、本人の状態と、主治医の指示、訪問看護の計画で決まります。施設に通ってリハビリを受けるサービスには、デイケア(通所リハビリテーション)もあります。
主治医の指示が要る
訪問看護は、本人や家族が頼みたいと思っただけでは始められません。事業所の国の基準(平成11年厚生省令第37号)の第69条は、次のように定めています。
指定訪問看護事業者は、指定訪問看護の提供の開始に際し、主治の医師による指示を文書で受けなければならない。
出典:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 第69条第2項
この文書は、一般に「訪問看護指示書」と呼ばれています。病院や診療所が自分で訪問看護を行う場合は、診療記録への記載で代えることができます(同条第4項)。
ケアマネジャーは、本人が訪問看護などの医療サービスを希望している場合などには、本人の同意を得て主治の医師などの意見を求め、ケアプランに入れるのは主治の医師などの指示がある場合に限られます(平成11年厚生省令第38号 第13条第19号・第20号)。訪問看護の計画は、看護師など(准看護師を除く)が、主治医の指示や本人の状態を踏まえて作り、本人か家族に説明して、本人の同意を得ます(第37号 第70条)。
介護保険と医療保険のどちらで使うか
訪問看護は、介護保険でも医療保険でも使えるサービスです。介護保険で使うには、要介護・要支援の認定を受けている必要があります。認定がまだのときは、どう使えばよいかを主治医や病院の相談窓口に相談し、あわせて認定の申請も考えてください(要介護認定とは)。
認定を受けている人について、原則は介護保険です。厚生労働省の介護給付費分科会の資料(令和8年6月29日)は、次のように説明しています。
介護保険の給付は医療保険の給付に優先することとしており、要介護被保険者等については、末期の悪性腫瘍、難病患者、急性増悪等による主治医の指示があった場合などに限り、医療保険の給付により訪問看護が行われる。
出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料3「訪問看護」
医療保険と介護保険の調整を定めた厚生労働省の通知(令和8年3月27日改正)も、要介護者等については医療保険の訪問看護は「原則として算定できない」としたうえで、例外を挙げています。
医療保険になる主な場合
要介護・要支援の認定を受けていても、医療保険で訪問看護を受けることになる主な場合は、次のとおりです。
- 末期の悪性腫瘍の人
- 国が定める病気などの人 ― 介護保険の訪問看護費の対象から外れる人として平成27年厚生労働省告示第94号に挙げられた病気などで、たとえば多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病関連疾患(進行性核上性麻痺、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病。パーキンソン病は病気の段階に条件があります)、人工呼吸器を使用している状態などが含まれます
- 急に悪くなって、主治医が「特別訪問看護指示書」を出した場合 ― ふだんの訪問看護指示書とは別に、主治医が一時的に頻回の訪問看護が必要と認めて出す指示書です。報酬を定めた国の告示は、この場合、指示の日から「14日間に限って」介護保険の訪問看護費は算定しないとしていて、その間は医療保険になります。気管カニューレを使っている人や、真皮を超える褥瘡(床ずれ)のある人などは、月2回まで出せるとされています(厚生労働省 介護給付費分科会の資料)
- 精神疾患があり、精神科訪問看護の指示書が出ている場合 ― 通知は、この場合は要介護者等でも医療保険で算定できるとしています。ただし、認知症が主な病名の人は対象外です(精神科在宅患者支援管理料を算定する人を除く)
- 入院中に、退院に向けた訪問看護を行う場合 ― 通知は、入院中(外泊日を含む)に退院に向けた訪問看護を行う場合は医療保険で算定できるとしています。ただし、入院している人なら誰でも受けられるという意味ではありません。使えるかどうかは、入院先の病院や訪問看護の事業所に確かめてください
ここに挙げたのは主な例で、すべてではありません。自分の親がどちらになるかは、病名だけで判断せず、主治医と訪問看護の事業所、ケアマネジャーに確かめてください。どちらの保険になるかで、手続きや自己負担の決まり方も変わります。
夜間や急なときの連絡
訪問看護の事業所の中には、24時間連絡がとれる体制をとっているところがあります。報酬を定めた国の告示は、基準を満たして届け出た事業所が、利用者の同意を得て、24時間連絡できる体制と、計画にない緊急の訪問を必要に応じて行える体制をとっている場合に、緊急時訪問看護加算を1か月ごとに算定できるとしています。
つまり、夜間や急なときに連絡できるかどうかは、事業所の体制と、本人がその体制を使うことに同意しているかによります。どの事業所でも24時間いつでも来てくれる、というわけではありません。24時間連絡できる体制があっても、電話で相談した結果、訪問ではなく受診などを勧められることもあります。夜間にどんな対応を受けられるかは、契約の前に確かめてください。
また、この加算は月単位のものなので、算定の条件を満たしていれば、実際に緊急の訪問を受けなかった月にも付くことがあります。
事業所は、運営規程に「緊急時等における対応方法」を定めることになっていて(第37号 第73条)、その概要は契約前にもらう重要事項説明書に載ります。夜間や休日の連絡先と、来てもらえる条件は、その欄で確かめてください。
費用の考え方
介護保険で使う場合は、サービス費の1割を自己負担するのが基本です(介護保険法第41条第4項。要支援の人は第53条)。65歳以上で所得が一定以上の人は、2割または3割になります(第49条の2・第59条の2)。サービス費は、報酬を定めた国の告示で、主に次の組み合わせで決まっています。
- 事業所の種類(訪問看護ステーションか、病院・診療所か)
- 1回の時間の区分(20分未満、30分未満、30分以上1時間未満、1時間以上1時間30分未満)
- 来る職種(准看護師の場合や、理学療法士などの場合は単位が違う)
介護保険の訪問看護は、ほかの在宅サービスと合わせて、要介護度ごとの1か月の利用限度額(区分支給限度基準額。介護保険法第43条)の中でケアプランに入れて使います。限度額を超えた分は、原則として全額が自己負担になります。訪問の回数を増やしたいときは、月全体の費用をケアマネジャーに確かめてください。
これに、緊急時の加算や、事業所が算定するほかの加算が加わります。金額は契約の前にもらう重要事項説明書に書かれているので、分からないところはケアマネジャーにも聞いてみてください。医療保険で使う場合は、医療保険の決まりで自己負担が決まるので、事業所に確かめてください。
頼むまでの流れ
介護保険で使う場合の流れは、次のとおりです。
- 訪問看護を使いたいことを、ケアマネジャーに伝える(要支援の人は地域包括支援センターなどに相談する。ケアマネジャーの役割はケアマネジャーとは)
- ケアマネジャーが、本人の同意を得て主治医の意見を聞く
- 主治医が訪問看護の事業所に、文書で指示を出す
- 事業所の看護師などが訪問看護の計画を作り、説明して本人の同意を得る
- ケアプランに位置づけて、訪問が始まる
医療保険で使う場合は、この流れと違うことがあります。まず主治医か訪問看護の事業所に相談してください。退院に合わせて始めたいときは、入院中に病院の相談窓口や主治医、ケアマネジャーに伝えておくと、退院後の訪問につなげやすくなります。
ヘルパーが家事や身の回りの介護をする訪問介護との違いは、訪問介護とはの「訪問看護との違い」でまとめています。認知症の症状や相談先は認知症とはで説明しています。
まとめ
- 訪問看護は、看護師などが家に来て、療養上の世話や診療の補助をするサービス。保健師・准看護師・リハビリ職が来ることもある
- 使うには主治医の文書による指示が要る
- 要介護・要支援の人は原則として介護保険。末期の悪性腫瘍、国が定める病気など、急に悪くなったときの特別の指示の期間などは医療保険になる
- 夜間や急なときの対応は、事業所の体制と本人の同意による。どこでも24時間来てくれるわけではなく、連絡しても訪問になるとは限らない
- 費用は1割(所得により2割・3割)の自己負担。事業所の種類、時間、職種、加算で変わり、介護保険では1か月の限度額の中で使う
- 介護保険で頼むときは、ケアマネジャー→主治医の指示→事業所の計画の順。医療保険の場合は主治医か事業所に相談
介護保険制度は改正されることがあります。このページは2026年11月2日時点で確認できる法令・厚生労働省の資料に基づいています。医療に関わる判断は、主治医に相談してください。
情報源:介護保険法第8条第4項・第8条の2・第41条第4項・第43条・第49条の2・第53条・第59条の2、介護保険法施行規則第6条・第7条、指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第8条・第69条・第70条・第73条・第74条、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)第13条第19号・第20号、指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成12年厚生省告示第19号)訪問看護費、厚生労働大臣が定める基準に適合する利用者等(平成27年厚生労働省告示第94号)第4号、厚生労働省「医療保険と介護保険の給付調整に関する留意事項及び医療保険と介護保険の相互に関連する事項等について」の一部改正(令和8年3月27日、令和8年6月1日適用)、厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料3「訪問看護」(令和8年6月29日)