パソコンでネットを見ているとき、突然「ピー」という大音量の警告音と一緒に「ウイルスに感染しました」という画面が出た経験はありませんか?その画面に書かれた電話番号にかけてしまうと、遠隔操作で銀行口座のお金まで奪われる「サポート詐欺」の被害が、いま全国で増えています。この記事では、警察庁・IPA(情報処理推進機構)・国民生活センターの公式情報をもとに、本物の警告との見分け方と正しい対処法をわかりやすく解説します。
1. その「ウイルス感染」警告と電話番号、サポート詐欺の典型手口です
パソコンでウェブサイトを見ているとき、突然画面いっぱいに赤や黄色の警告画面が表示され、「ウイルスに感染しました」「マイクロソフトに連絡してください」と表示される。さらに大音量の警告音が鳴り響き、画面には電話番号が大きく書かれている――。
こうした画面が出た場合、ブラウザ画面いっぱいに表示され電話番号への連絡を促してくる警告は、サポート詐欺の典型的な手口です。
国民生活センターも公式に「警告画面や警告音は偽物ではないか?とまずは疑ってみましょう」と注意喚起しています。IPA(情報処理推進機構)に寄せられる相談件数は2022年に過去最高の年間2,365件を記録し、その後も高水準で推移しています。
本物の警告と偽物の警告、見分けるポイント
パソコンには本物のウイルス警告も存在します。Windows標準のセキュリティ機能や、市販のウイルス対策ソフト(ノートン、マカフィーなど)は、実際にウイルスを検知したときに警告を出します。しかし、サポート詐欺の偽警告には以下のような特徴があります。
- ブラウザを開いているときに、ブラウザの画面いっぱいに警告が表示される
- 警告音やナレーションで強い不安をあおる
- 電話番号やサポート窓口への連絡を促してくる
- 「Esc」「×」ボタンなど、通常の方法で画面が閉じられないように作られている
- 画面にマイクロソフトなど実在企業のロゴが使われている場合が多い
警察庁の公式情報によると、偽のセキュリティ警告画面は、実際のウイルス感染の有無に関わらず表示されます。つまり、画面が出てもパソコンが感染しているとは限らないということです。
一方、本物のウイルス対策ソフトの警告は、ブラウザの中ではなくパソコンの通知エリア(画面右下など)に表示されることがほとんどで、電話番号への連絡を強く要求してくることはありません。
2. 警察庁が発表する被害状況
サポート詐欺の被害は、警察庁の統計でも明らかになっています。
令和6年(2024年)の確定値
警察庁が2025年5月に発表した確定値によると、令和6年の架空料金請求詐欺のうち、パソコンのウイルス除去サポートを名目とした「サポート名目」の認知件数は1,524件、被害額は10.0億円にのぼりました。
表面的な認知件数は前年から減少傾向にあるものの、ひとたび被害に遭うと数十万円から数百万円を奪われるケースが多く、特に60歳以上のシニア世代の被害が目立っています。
1件あたりの被害額が大きい理由
サポート詐欺の被害額が大きくなりがちな理由は、犯人がパソコンを遠隔操作してネットバンキングで送金させたり、コンビニで電子マネーを繰り返し購入させたりするため、一度の被害額が大きくなりやすいからです。国民生活センターの報告では、何度もプリペイドカードを購入させられ、被害額が数十万円に達するケースも確認されています。
3. 詐欺の流れを4ステップで解説
サポート詐欺は、おおよそ以下の流れで被害者を追い込みます。
ステップ1:突然の警告画面と警告音
普通にネットサーフィンをしているだけで、突然ブラウザがフルスクリーンになり、警告画面が表示されます。大音量の警告音や、機械的な音声まで流れることも多く、見た人をパニックに陥れる作りになっています。
多くの場合、悪意のある広告(マルバタイジング)を経由して表示されるため、不審なサイトを見ていなくても遭遇する可能性があります。IPAのレポートによると、2024年からは「次のページに進むボタン」のように見える偽装広告から警告画面に誘導される手口が増加しています。
ステップ2:画面の電話番号に誘導
画面には大きく「マイクロソフト サポート」「すぐにこの番号に電話してください」などの文字が表示され、050から始まる電話番号が記載されていることが多いです。被害者がこの番号に電話してしまうと、ステップ3に進みます。
ステップ3:遠隔操作ソフトを入れさせる
電話に出るのは、片言の日本語を話すオペレーターを名乗る男性であることが多いとされています。「ウイルスを除去するために、画面の指示通りに操作してください」と言われ、遠隔操作ソフト(AnyDeskやTeamViewerなど)をパソコンにインストールさせられます。
これらのソフト自体は、本来は企業のIT部門が遠隔サポートに使う正規のツールですが、悪用されると犯人がパソコンを自由に操作できる状態になってしまいます。
ステップ4:お金を奪う
遠隔操作ができるようになると、相手は「サポート料金」と称して以下のような行動を求めてきます。
- ネットバンキングを開かせて送金させる
- コンビニで電子マネーを購入させて番号を伝えさせる
- クレジットカード番号を入力させる
気づいたときには、数十万円から数百万円が消えています。
4. やってはいけない3つの行動
サポート詐欺の被害を防ぐために、やってはいけないこと
① 画面に表示された電話番号に電話する
② 遠隔操作ソフトをインストールする
③ クレジットカード番号や電子マネーの番号を伝える
特に重要なのは、最初の「電話をかけない」という1点です。IPAも公式に「電話をかけなければ被害は発生しない」と明言しています。
逆に言えば、画面に表示された番号にかけてしまうと、犯人と直接会話することになり、心理的に断りづらくなってしまいます。そもそも電話をかけないことが、最大の防衛策です。
5. 警告画面が出たときの正しい対処法
IPAおよび警察庁が推奨している対処法を、順を追って紹介します。
対処1:まずは落ち着く
警告音が鳴っていても、それは詐欺グループが用意した音声ファイルが鳴っているだけです。画面が表示された時点では、パソコンの中に大きな問題が起きているとは限りません。慌てて電話をかける必要はありません。
対処2:Escキーの長押しでブラウザを閉じる
サポート詐欺の偽警告画面は、通常の「×」ボタンや「Ctrl + W」「Alt + F4」などのショートカットを無効化するように作られていることが多いです。そのためIPAは以下の方法を推奨しています。
- 「Esc(エスケープ)」キーを数秒(約3秒)長押しすると、閉じるボタンが現れる場合があります
- 画面内をいったんクリックしてから、再度Escキーを長押しすると効果がある場合があります
- Macの場合は「esc」キーを長押し → 「Command + W」でタブを閉じる
対処3:タスクマネージャーで強制終了
Escキーで閉じられない場合は、Windowsならタスクマネージャーで強制終了する方法があります。
- 「Ctrl」+「Alt」+「Delete」キーを同時に押す
- 「タスクマネージャー」を選択
- 警告が表示されているブラウザ(Edge、Chrome等)を選択して右クリック
- 「タスクの終了」を選択
対処4:それでも消えない場合は強制終了
どうしても画面が消えない場合は、慌てずにパソコンの電源ボタンを長押しして強制終了してください。再起動すれば警告画面は消えていることが多いです。
1〜2回の強制終了でパソコンが壊れることはほぼありません。データが消えたりウイルスに感染したりすることもありません。
対処5:再起動後はブラウザの履歴を確認
再起動後、ブラウザを開いたときに「前回のセッションを復元」のような表示が出ても、復元しないでください。詐欺サイトのページがそのまま再表示されてしまいます。
新しいタブで普通にネットを使い始めれば問題ありません。念のため、ブラウザの閲覧履歴やキャッシュを削除しておくと安心です。
6. 家族のパソコンも一緒に守るために
サポート詐欺の被害者は、特に60代から70代のシニア世代に多い傾向があります。スマホよりもパソコンを使う機会が多く、警告画面が出たときに「自分の操作が悪かったのかも」と動揺してしまいがちです。
実家の親に伝えたい3つのこと
帰省したときや電話をしたときに、ぜひ実家のご両親に以下の3つを伝えてあげてください。
- 「ウイルス感染」の警告と電話番号がセットで出たら、まず疑ってかかる
- 画面の電話番号には絶対にかけない
- 消えなければ電源ボタン長押しで強制終了するだけ
これだけで、被害を未然に防ぐ可能性が高まります。
事前にできる予防策
家族のパソコンに、以下のような対策をしておくとさらに安心です。
- OS(WindowsやmacOS)を最新の状態に保つ
- 正規のウイルス対策ソフトを導入する
- 不審なメールのリンクや広告はクリックしない習慣をつける
- 困ったときに連絡できる家族の電話番号を、すぐ見える場所に置いておく
7. もし被害に遭ってしまったら
すでにお金を振り込んでしまったり、電子マネーの番号を伝えてしまった場合は、すぐに次の対応をしてください。
対応1:パソコンをネットワークから切断
遠隔操作ソフトが入っている場合、犯人がまだあなたのパソコンを操作できる可能性があります。すぐにLANケーブルを抜く、またはWi-Fiを切ることで、被害の拡大を防げます。
その後、ウイルス対策ソフトでパソコンをスキャンし、インストールされた不審なソフトをアンインストールしてください。可能であれば初期化を行い、パスワードも変更しておくと安心です。
対応2:カード会社・電子マネー業者に連絡
クレジットカード番号を伝えてしまった場合は、すぐにカード会社に連絡してカードを停止してください。電子マネーで支払ってしまった場合は、電子マネーの管理会社に連絡し、決済手続きの停止と救済措置について相談しましょう。
対応3:警察相談専用電話「#9110」に電話
事件として扱うべきか迷う段階では、「#9110」(警察相談専用電話)に電話しましょう。
- 電話番号:#9110(局番なし)
- 受付時間:平日午前8時30分〜午後5時15分(地域により異なる)
- 相談料:無料(通話料は有料)
偽のセキュリティ警告画面やインストールしたソフトウェアがわかる資料、支払いの履歴などを保存しておくと、相談がスムーズに進みます。
対応4:消費者ホットライン「188」も活用
料金トラブルの観点からは、消費者ホットライン「188」(いやや)も相談先になります。最寄りの消費生活センターにつながり、専門の相談員がアドバイスしてくれます。
まとめ:覚えておきたい3つのポイント
ここまでの内容をまとめます。
- パソコン画面に突然出る「ウイルス感染」と電話番号がセットの警告は、まず疑う
- 画面に表示された電話番号には絶対にかけない
- 画面が消えなければ、Esc長押し→タスクマネージャー→電源長押しの順で対処
サポート詐欺は、大音量の警告音と派手な画面で焦らせるのが手口ですが、正体がわかってしまえば、対処はそれほど難しくありません。
この記事を家族のLINEに送って、いざという時のために覚えておいてもらいましょう。たった5分の確認が、何十万円もの被害を防ぐきっかけになります。
情報源:警察庁「令和6年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について」(令和7年5月23日発表確定値)、警察庁「サポート詐欺対策」公式ページ、警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「偽セキュリティ警告(サポート詐欺)対策特集ページ」、IPA「サポート詐欺レポート」、国民生活センター「そのセキュリティ警告画面・警告音は偽物です!サポート詐欺にご注意!!」(2022年2月発表)、警察相談専用電話「#9110」、消費者ホットライン「188」
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