詐欺対策・防犯

詐欺師は「家族に相談したい」をどうやって阻止するのか|公的機関の注意喚起と見分け方

詐欺師は「家族に相談したい」をどうやって阻止するのか|公的機関の注意喚起と見分け方

詐欺師から電話がかかってきたとき、もし「一旦、家族に相談します」と返事をしたら、相手はどう返してくるのでしょうか。普通なら諦めるはずと思いがちですが、現実は逆。「家族に相談される」ことは、詐欺師にとって最大の敵です。だからこそ、相談を阻止する切り返しが何種類も用意されています。この記事では、警察庁・警視庁などの公的機関が公表している注意喚起をもとに、相談阻止の典型パターンと、本物の警察との見分け方を解説します。

1. 「家族に相談される」ことは、詐欺師にとって致命的

特殊詐欺の多くは、被害者を孤立させることで成立します。家族や知人に相談されると、第三者の冷静な目で「それは詐欺じゃない?」と気づかれてしまうため、犯人は何としても相談を防ごうとします。

東京都港区の公式注意喚起では、孫などの親族を名乗る電話の場合の対処として、次のように書かれています。

「時間がない」「おじいちゃんにしか頼めない」「他の人には内緒にしてほしい」などと言われても、一旦電話を切って、家族に相談してください。
出典:港区「特殊詐欺対策」

つまり、「他言無用」「あなただけに頼みたい」と強調してくる電話そのものが、詐欺の典型的な特徴なのです。

2. 相談を阻止する3つの典型パターン

公的機関の注意喚起や、実際の被害事例から、詐欺師が使う相談阻止のパターンは大きく3つに分類できます。

パターン1:「捜査上の機密」と脅す

警察官を装ってかかってくるニセ警察詐欺で多用されるパターンです。「これは重要な捜査の一部だから、誰にも話してはいけない」と告げて、被害者を孤立させます。

警察庁が運営するSOS47特殊詐欺対策ページの実例では、次のような流れが紹介されています。

  • 「あなた名義の口座が不正に開設されており、あなたも資金洗浄事件の容疑者になっている」
  • 「まわりに誰もいないことを確認するため、ビデオ通話に切り替えてください」
  • 「警察手帳です(ビデオ通話で警察手帳を見せる)」
  • 「一度お金を全て振り込んでもらい、資金調査を行う必要がある」

「ビデオ通話に切り替えて、まわりに誰もいないか確認する」という指示そのものが、被害者を物理的に孤立させる手口です。

パターン2:「家族も巻き込まれる」と不安を煽る

「家族に話せば、ご家族も共犯として疑われる」「ご家族の中に犯人と通じている人がいるかもしれない」など、家族を疑わせたり、家族にも被害が及ぶと脅して相談を断念させるパターンです。

これは家族を守りたい気持ちを逆手に取った手口です。「家族のため」を思って黙っているうちに、結果的に最も身近な相談相手から切り離されてしまいます。

パターン3:「今すぐ動かないと手遅れ」と緊急性を煽る

「今この瞬間も口座のお金が動いている」「2時間後にはこの電話が使えなくなる」など、考える時間を与えないようにするパターンです。

警察庁SOS47ページでも、次のような自動音声を使った詐欺が報告されています。

「2時間後からこの電話は使えなくなる」「使用する場合は1番を押してください」などの自動音声ガイダンスを利用した被害が発生しています。犯人側が自動発信機能等を利用して大量に架電している実態もうかがわれます。
出典:警察庁SOS47特殊詐欺対策ページ

緊急性を煽られると、人は論理的に考える余裕を失い、冷静に第三者に相談する判断ができなくなります。これが詐欺師の狙いです。

3. 本物の警察と詐欺師の決定的な違い

ここまでで紹介した「相談阻止」の手口を踏まえると、本物の警察との見分け方が見えてきます。

本物の警察は「家族に相談してから自分で調べた窓口に連絡してください」と言う

警視庁の公式注意喚起では、警察官を装う詐欺電話への対応として次のように呼びかけています。

まずは、落ち着いて一旦電話を切り、家族や知人に相談してから折り返しましょう。通話内容に不審な点があれば、最寄りの警察署、交番へ通報してください。
出典:警視庁「警察官等をかたる詐欺」

ここで重要なのは、「折り返す先」です。警察庁SOS47特殊詐欺対策ページでは、次のようにはっきり警告しています。

電話やビデオ通話を切って、
・対面で最寄りの警察署へ御相談ください
・警察相談専用電話(#9110)に御相談ください
相手方から教示された番号には、決して折り返さないでください。
出典:警察庁SOS47特殊詐欺対策ページ

つまり、本物の警察は「電話を切って、自分で調べた正規の窓口に連絡してください」と案内します。「他言無用」「家族にも言うな」「この番号にかけ直して」と要求してくる時点で、その電話は詐欺と考えて間違いありません。

本物の警察がやらないこと

愛知県警の公式広報資料(警察庁SOS47連携)によると、本物の警察は次のことを絶対にしません。

  • SNSで連絡しません(LINE・ビデオ通話に切り替えるよう要求しない)
  • 警察手帳や逮捕状の画像を送りません
  • 金銭を要求しません(振込・暗号資産・資産保護名目を含む)

これらに1つでも該当する電話があれば、それは100%詐欺です。

4. 令和7年上半期で被害額389億円のニセ警察詐欺

警察庁が公表した「令和7年上半期のニセ警察詐欺」のデータでは、深刻な実態が示されています。

  • 認知件数:4,737件
  • 被害額:389.3億円
  • 特殊詐欺全体に占める割合:35.9%

意外に思われるかもしれませんが、被害は幅広い年代に及んでおり、30代が973件(20.5%)で最多、次いで20代が884件(18.7%)と若い世代も狙われています。「高齢者だけの問題」ではなくなっているのが実情です。

5. 「家族に相談する」を阻止されたときの対処法

詐欺師に「他言無用」「家族には言うな」と要求されたら、どうすればいいのでしょうか。

絶対にやってはいけないこと:「かかってきた番号への折り返し」

もっとも危険な行動は、相手から教えられた番号や、着信表示された番号に折り返すことです。詐欺師は次のような手口で、折り返し電話までも罠にしています。

  • スプーフィング(発信者番号偽装):警視庁の代表電話番号や末尾「0110」の警察署番号を着信画面に偽装表示させる
  • 教示された番号:「捜査担当の直通番号」と称して、犯人グループにつながる番号を伝える
  • 国際電話番号からの偽装:「+」から始まる番号で正規番号を装う

実際の被害事例(警察庁SOS47で公表)では、被害者がお金を振り込んだ後に「最初に着信表示されていた愛知県警察本部の代表電話番号」に確認のため電話をかけて、初めて詐欺と気付いたケースが報告されています。振込前にこの確認をしていれば被害は防げたのです。

正しい4ステップの対処法

  1. その場で電話を切る:「ちょっと考えます」と言わずに、無言で切ってOK
  2. 必ず家族に相談する:本物の警察なら、家族に相談して困ることは何もない
  3. 正規の連絡先を「自分で」調べる:警察庁・各都道府県警の公式サイト、電話帳、最寄り警察署の代表番号など。着信履歴の番号や相手から教えられた番号は使わない
  4. 「#9110」または最寄りの警察署に相談:警察相談専用電話「#9110」や、対面で最寄りの警察署を訪ねるのが確実

国民生活センターも公式に「警察署等の連絡先を自分で調べた上で相談してください」と注意喚起しています(2025年4月発表)。

「相手が本物の警察だったら失礼かも」と心配する必要はありません。本物の警察は、市民が確認のために電話を切ることをまったく問題視しません。むしろ、それが正しい対応だと公式に推奨しています。

こう返せば確実に詐欺師は撤退する
「すみません、警察庁の指示通り一旦切って、家族に相談します。確認が必要なら、自分で調べた警察署に直接連絡します

本物の警察ならこれで何の問題もありません。詐欺師であれば、この瞬間に粘っても無駄だと判断して撤退するか、「この番号にかけてください」「家族には言うな」と追加の脅しを試みてきます。それは間違いなく詐欺です。

6. 家族で話し合っておきたいこと

詐欺電話への最大の防御は、被害者が家族に相談できる環境を、平時から作っておくことです。

家族で共有しておきたい4つのルール

  • 「他言無用」と言われた時点で詐欺:本物の警察は決して言わない
  • かかってきた番号には絶対に折り返さない:着信表示された番号も偽装の可能性あり
  • お金の話が出たら必ず家族に相談:1人で判断しない
  • 困ったら自分で調べた窓口へ:「#9110」または最寄りの警察署の代表番号

特に離れて暮らす親がいる場合は、定期的に「最近こんな詐欺電話が増えているらしい」と話題にしておくだけでも、いざというときの抑止力になります。

まとめ:覚えておきたい3つのポイント

  • 詐欺師は「他言無用」「家族にも言うな」と必ず相談を阻止しようとする。これ自体が詐欺の特徴
  • かかってきた番号には絶対に折り返さない。教示された番号も着信表示された番号も偽装の可能性あり(警察庁SOS47)
  • 不安なときは1人で抱え込まず、家族に相談したうえで「自分で調べた」#9110や最寄りの警察署に連絡する

令和7年上半期だけで389億円もの被害が出ているニセ警察詐欺。その全てが、被害者を孤立させて家族から切り離すことで成立しています。逆に言えば、「家族に相談する」というシンプルな行動が、最強の防御策なのです。

この記事を家族のLINEに送って、実家の親と「他言無用と言われたら詐欺」というルールを共有しておきましょう。離れて暮らしていても、平時から話しておくだけで、いざというときに大切な人を守れます。

情報源:警視庁「警察官等をかたる詐欺」(2026年4月15日更新)、警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「ニセ警察詐欺に注意!」「警察に偽装した電話番号に注意!」、東京都港区「特殊詐欺対策」(2026年3月19日)、愛知県警察「特殊詐欺にご注意」(令和7年12月更新)、国民生活センター「警察を名乗る電話に注意!−警察がLINEに誘導することはありません−」(2025年4月23日発表)、警察庁「令和7年上半期における特殊詐欺、SNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況について(暫定値)」

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