ストレスを減らすには、気分を変えようとするより、生活の側を整えるほうが手をつけやすくなります。厚生労働省の調査では、仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスがある労働者は68.3%、内容は「仕事の量」が43.2%で最多でした。この記事では、ストレスの仕組みの分け方と、睡眠・食事・環境・人間関係のそれぞれで整えられる部分をまとめます。
ストレスを2つに分ける
厚生労働省「こころの耳」は、日常生活でストレッサー(原因になる出来事)を経験すると、心理面・身体面・行動面にストレス反応が現れると説明しています。そして、対処能力を上回るストレッサーを経験したり、ストレッサーが長く続いたりすると反応が慢性化し、活気が低下してくるとしています。
ストレッサーによる悪影響を和らげるための工夫はコーピング(対処)と呼ばれます。この分け方に沿うと、手を入れられる場所は2つです。
- 出来事の側(仕事量を調整する、関わる相手を変える、環境を変える)
- 反応の側(体の状態を整える、受け取り方を変える、休む時間を作る)
「ストレスフリー」という言葉はよく使われますが、ストレッサーを完全になくすことはできません。減らせるものを減らし、残るものへの対処を用意しておく、という形が現実的です。
いまの負荷を把握する
厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、現在の仕事や職業生活で強い不安・悩み・ストレスとなっている事柄がある労働者は68.3%でした。内容は次のとおりです(主なもの3つ以内)。
| 強いストレスの内容 | 割合 |
|---|---|
| 仕事の量 | 43.2% |
| 仕事の失敗、責任の発生等 | 36.2% |
| 仕事の質 | 26.4% |
年齢別では30歳代73.3%、40歳代73.0%で高くなっています。令和5年は82.7%でしたが、設問の形式を変えているため前年との単純な比較はできないと調査自体が注記しています。
自分の場合に何が当てはまるかを書き出してみてください。「なんとなく疲れている」の中身が特定できると、手当てする場所が決まります。
睡眠から整える
厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査」によると、ここ1か月で睡眠で休養がとれている人は74.9%で、平成21年からの推移では有意に減っています。1日の平均睡眠時間が6時間未満の人は男性38.5%・女性43.6%で、男性の30〜50歳代、女性の40〜60歳代では4割を超えています。
厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」は、良質な睡眠のための環境づくりとして次を挙げています。
- 日中にできるだけ日光を浴びる(体内時計が調節され、入眠しやすくなる)
- 就寝の約1〜2時間前に入浴し、身体を温めてから寝床に入る
- 寝室にスマートフォンやタブレットを持ち込まず、できるだけ暗くして寝る
- できるだけ静かな環境で、リラックスできる寝衣・寝具で眠る
ガイドによると、就寝の約2時間前から睡眠を促すホルモン(メラトニン)の分泌が始まります。それ以降に強い光を浴びると分泌が抑えられ、入眠が妨げられることが報告されています。
湯温にも注意があります。ガイドのQ&Aでは、極端に湯温が高いと交感神経の活動が亢進し、かえって入眠を妨げる可能性があるとされています。
食事は「そろっているか」で見る
同じ国民健康・栄養調査では、主食・主菜・副菜を組み合わせた食事を1日2回以上とっている人は男性45.7%・女性47.1%でした。20歳代では男性27.8%・女性28.6%まで下がります。
野菜の摂取量は平均256.0g(男性262.2g、女性250.6g)で、この10年で男性は有意に減少しています。350g以上とれている人は男性25.2%・女性21.9%です。
細かい栄養計算より、主食・主菜・副菜がそろっている回数を数えるほうが実行しやすく、確認もできます。1日3食すべてを整えようとせず、1食だけ決めるところから始められます。
環境を変える
気持ちの持ち方より先に変えられるのは、物理的な環境のほうです。
- 明るさ(日中は明るく、夜は抑える。日光を浴びる時間を作る)
- 音(静かにできない場合、耳栓やイヤホンで調整できることもあります)
- 温度(夏の寝室の室温上昇は、睡眠時間の短縮と睡眠効率の低下に関連するとされています)
- 見えるもの(作業する場所から、仕事以外のものを減らす。逆に休む場所からは仕事のものを離す)
場所と行動を結びつけておくと、切り替えがしやすくなります。同じ場所で仕事も休息もしていると、どちらの状態にも入りにくくなります。
体を動かす
同じ調査で、運動習慣のある人は男性36.2%・女性28.6%でした(1回30分以上の運動を週2回以上、1年以上継続している人)。年齢別では男性の30歳代23.5%、女性の20歳代14.5%がもっとも低くなっています。歩数の平均は男性6,628歩・女性5,659歩で、この10年で男女とも有意に減少しています。
新しく運動を始めるのが難しい場合でも、通勤の一部を歩く、昼休みに外に出るといった形なら組み込みやすくなります。日中に日光を浴びることは、睡眠の環境づくりにも関わります。
人との関わりを整える
労働安全衛生調査では、ストレスについて相談できる人がいる労働者は94.6%でした。相談できる相手は「家族・友人」68.6%、「上司」65.7%の順です。
ただし、実際に相談したことがある人は、相談できる人がいる労働者のうち74.7%にとどまります。相手がいることと、実際に話すことは別だという数字です。
断る形も、関わり方の1つです。厚生労働省の「こころの耳」は、相手の気持ちや考えを尊重しながらも、自分の気持ちや考えをその場に適した表現で伝える方法を「アサーション」と呼んでいます。我慢して引き受け続けるのも、強く断るのも、この形からは外れます。
続ける形にする
一度にすべてを変えようとすると、どれも続きません。
- 1つに絞る(3つ始めるより、1つを2週間続けるほうが結果が見えます)
- すでにある習慣にくっつける(新しい時間を作らない)
- できなかった日を数えない(連続記録が切れた時点でやめる形にしない)
- 効果をすぐ判定しない(数日では、生活の変化より日々の揺れのほうが大きく出ます)
状態が続くときは
厚生労働省は、気分の落ち込みや睡眠の問題などの症状が2週間以上続く場合には「うつ」が疑われるとして、専門家(精神科、心療内科)に早めに相談することをすすめています。
職場に産業医や相談窓口がある場合は、そちらも使えます。社内で解決しない場合は、都道府県労働局の「総合労働相談コーナー」が無料で相談を受け付けています。
まとめ
- ストレッサーと反応を分ける。手を入れられるのは出来事の側と反応の側の2つ
- 強いストレスがある労働者は68.3%。内容は仕事の量43.2%が最多
- 睡眠から整える。睡眠で休養がとれている人は74.9%で減少傾向。6時間未満が男性38.5%・女性43.6%
- 食事は主食・主菜・副菜がそろった回数で見る。1日2回以上そろう人は男性45.7%・女性47.1%
- 相談先は「いる」で止めない。いるのは94.6%だが、実際に相談した人は74.7%
情報源:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」個人調査第17表・第18表・第19表、厚生労働省「令和5年 国民健康・栄養調査結果の概要」、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」、厚生労働省「こころの耳」ストレス軽減ノウハウ・用語解説「アサーション」
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