介護サービスの自己負担が重くなった月は、払いすぎた分があとから戻ります。高額介護サービス費という介護保険の制度で、1か月に払った1割から3割の負担の合計が、所得に応じた上限を超えた分が支給されます。市区町村民税が課税されている世帯(課税所得380万円未満)なら、上限は1か月44,400円です。ただし、受け取るには市区町村への申請が要り、施設の食費や部屋代などは対象になりません。この記事では、対象になる費用とならない費用、申請のしかた、いつまで申請できるか、医療費と合わせて軽くする制度との違いをまとめます。
高額介護サービス費とは
介護サービスを使うと、かかった費用の1割から3割を自分で払います。この負担が大きくなりすぎないように、1か月ごとに上限が決められています。根拠は介護保険法の第51条です。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムは、この制度を次のように説明しています。
月々の利用者負担額(福祉用具購入費や食費・居住費等一部を除く。)の合計額が所得に応じて区分された上限額を超えた場合、その超えた分が介護保険から支給されます。
出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
- 1か月単位で計算する ― 月をまたいで合計することはありません
- 上限は世帯で見るのが基本 ― 同じ世帯に介護サービスを使っている人が2人いれば、2人分の負担を合わせて上限と比べます
要支援1・2の人が使う介護予防サービスにも、同じ仕組みがあります。こちらは高額介護予防サービス費(介護保険法第61条)という名前ですが、考え方は変わりません。
対象になる費用・ならない費用
戻ってくるのは、介護保険が使えたサービスの自己負担分だけです。介護にかかったお金がすべて対象になるわけではありません。対象にならないものには、それぞれ理由があります。
| 費用 | 対象か | 理由 |
|---|---|---|
| 訪問介護・デイサービス・ショートステイなどの1割から3割の負担 | 対象 | この制度が軽くするのは、この部分 |
| 施設やショートステイの食費・居住費(滞在費)、日常生活費 | 対象外 | もともと介護保険の給付から外されている費用(介護保険法第41条・第48条) |
| 福祉用具の購入費、住宅改修費 | 対象外 | 別の給付として扱われ、第51条の計算に入っていない |
| 1か月の利用上限を超えて使い、全額を払った分 | 対象外 | 上限を超えた分は保険が使えないサービスなので、そもそも1割から3割の負担ではない |
最後の行は見落としやすいところです。要介護度ごとの1か月の利用上限を超えて使った分は、10割を自分で払います。文京区の案内も、対象外の費用として「支給限度基準額を超えて利用したサービスの自己負担額」を挙げています。回数を増やしたときに上限を超えるかどうかは、要介護1でデイサービスは週何回使える?で計算の考え方を説明しています。
施設やショートステイの食費・部屋代には、この制度とは別に、負担限度額認定(特定入所者介護サービス費、介護保険法第51条の3)という軽減の仕組みがあります。対象は、特別養護老人ホームなどの介護保険施設に入っている人とショートステイを使う人で、所得や資産が一定以下の人に限られます。デイサービスの食費は対象になりません。介護サービス情報公表システムも、認定を受けるには「お住まいの市区町村に申請をしてください。」としています。ショートステイの食費・滞在費と負担限度額認定は、ショートステイ(短期入所)とはでも説明しています。
上限額は所得で決まる
上限は、世帯の所得によって分かれています。市区町村民税が課税されている世帯で、65歳以上の人の課税所得が380万円未満なら、1か月44,400円(世帯)です。課税所得が380万円以上の65歳以上の人がいる世帯は、これより高くなります。逆に、世帯の全員が市区町村民税非課税なら低くなります。
計算の例
上限が44,400円の世帯で、夫婦2人とも介護サービスを使い、2人の1割から3割の負担が1か月で合わせて60,000円だった場合、上限を超えた15,600円が戻る計算になります。この60,000円には、食費・居住費や、利用上限を超えて全額払った分は含めません。
所得区分ごとの上限
所得区分ごとの上限額は、介護保険とはの「費用が高くなったときに戻る制度」に一覧の表でまとめています。
なお、世帯全員が市区町村民税非課税で、前の年の公的年金等の収入額と、年金以外の合計所得金額を足した額が一定以下の人は、世帯の上限が24,600円のまま、個人の上限が15,000円になります。この基準額は、2026年8月1日から82万6,500円になりました(2026年7月までは80万9,000円)。介護保険法施行令の第22条の2の2で決められている金額です。古い資料やパンフレットでは前の金額のままになっていることがあるので、自分がどの区分に当たるかは、市区町村から届く通知で確かめてください。
申請のしかた
高額介護サービス費は、払いすぎたからといって自動的に戻るものではありません。厚生労働省の介護サービス情報公表システムも「支給を受けるためには、市区町村に申請することが必要です。」としています。介護保険法施行規則の第83条の4でも、支給を受けたい人は申請書を市町村に出すことになっています。
申請書には、本人の氏名・生年月日・住所・個人番号(マイナンバー)・被保険者番号などを書き、証拠書類を付けることになっています(同条)。窓口に行く前に、介護保険の被保険者証、振込先の口座が分かるもの、家族が代わりに出す場合はその人の本人確認書類などを用意しておくと手続きが進めやすくなります。必要な書類は市区町村によって違うので、案内で確かめてください。
申請先は、介護保険に入っている市区町村の窓口です。ふだんは住んでいる市区町村ですが、施設に入るために別の市区町村へ住所を移した場合は、前の市区町村の介護保険に入ったままになることがあります(住所地特例、介護保険法第13条)。施設に入っている親の分を申請するときは、介護保険の被保険者証に書かれた市区町村を確かめてください。
文京区のように、上限を超えた月があると区から申請書が送られてくる自治体もあります。書類が届いたら、振込先の口座などを書いて返送します。文京区の場合、申請が受理されてから1か月から3か月後に振り込まれると案内しています。通知が届かないときや、上限を超えたかどうか分からないときは、窓口に問い合わせてください。
本人が手続きをするのが難しいときは、家族が代わりに出せるかを窓口で確かめてください。担当のケアマネジャーや地域包括支援センターに相談すると、手続きの流れを教えてもらえることがあります。
2回目以降の手続きは市区町村で違う
一度申請したあと、次に上限を超えた月にまた申請が要るかどうかは、介護保険法・施行令・施行規則には書かれていません。ただ、厚生労働省は2005年の通知(平成17年9月8日 老介発第0908001号)で、申請する人の負担を軽くするため、申請は初回のみで足りるようにする、申請のときに領収書の添付を求めない、初回に指定した口座に振り込む、といった取り扱いを市区町村に求めています。実際の手続きは市区町村の運用で、たとえば次のように案内されています。
- 福岡市 ― 「初回支給には、必ず申請が必要です。」「2回目以降支給対象が発生した場合には、自動的に指定口座へ振り込みます。」(福岡市の案内)
- 文京区 ― 2回目以降は初回に指定した口座へ自動的に振り込み、処理は3か月に1回(文京区の案内)
このように2回目からは手続きが要らない自治体がある一方で、扱いはどこでも同じとは限りません。初回の申請のときに、次からの手続きがどうなるかを窓口で聞いておくと安心です。振り込まれる時期や、振込先の口座を変えたとき・本人が亡くなったときの手続きも、あわせて確かめてください。
いつまで申請できるか
申請には期限があります。介護保険法の第200条は「保険給付を受ける権利は、これらを行使することができる時から二年を経過したときは、時効によって消滅する。」と定めています。2年を過ぎると受け取れなくなります。
条文は「行使することができる時から」とするだけで、具体的にどの日から数えるかは書いていません。文京区は、利用した月の自己負担を支払った日の翌日から2年、区から申請書を送った場合は通知が届いた日の翌日から2年、と案内しています。数え始めの日の扱いは案内によって書き方が違うので、2年を過ぎたかどうかを自分で決めずに、まず市区町村に確かめてください。
申請書が届いていたのに出し忘れていた、引き出しにしまったままだった、ということもあります。家族が書類を整理するときに、市区町村からの介護保険の通知がないか見ておくと、取りこぼしを防げます。
医療費と合わせて軽くする制度との違い
名前が似ている制度に、高額医療合算介護サービス費があります(介護保険法第51条の2)。1年の数え方は、介護保険法施行令の第22条の3で、毎年8月1日から翌年7月31日までと決められています。違いは次のとおりです。
| 高額介護サービス費 | 高額医療合算介護サービス費 | |
|---|---|---|
| 合計するもの | 介護サービスの自己負担 | 医療保険と介護保険の両方の自己負担 |
| 期間 | 1か月ごと | 1年ごと(毎年8月1日から翌年7月31日まで) |
| 申請先 | 市区町村 | 加入している医療保険 |
介護サービス情報公表システムは、合算の制度について、同じ医療保険の世帯で医療と介護の両方に負担があった場合に「決められた限度額(年額)を500円以上超えた場合、医療保険者に申請をすると超えた分が支給されます。」と説明しています。医療保険の側では、たとえば協会けんぽの案内が「その超えた金額が501円以上の場合に限ります。」としています。年額の限度額を超えた金額が500円以下なら支給されない、ということです。入院や通院が多い年に介護サービスも使っていた場合は、こちらも当てはまる可能性があります。
まとめ
- 1か月の1割から3割の負担が上限を超えると、超えた分が戻る。上限は世帯で見るのが基本
- 食費・居住費、福祉用具の購入費、住宅改修費、利用上限を超えて全額払った分は対象外
- 市区町村民税が課税されている世帯(課税所得380万円未満)の上限は月44,400円。非課税世帯の個人の基準額は2026年8月から82万6,500円。区分の一覧は介護保険とはへ
- 受け取るには申請が要る。申請先は介護保険に入っている市区町村。国は申請を初回のみで足りるようにする扱いを求めているが、実際の手続きは初回に確かめておく
- 申請できるのは2年まで。数え始めの日は市区町村に確認する
- 医療と介護を1年分合わせて軽くする制度は別にある。申請先は医療保険
介護保険制度は改正されることがあります。このページは2026年11月2日時点で確認できる法令・厚生労働省資料・自治体の案内に基づいています。上限額や基準額は見直されることがあるので、最新の金額は市区町村の案内で確かめてください。
情報源:介護保険法第13条・第41条・第48条・第51条・第51条の2・第51条の3・第61条・第200条、介護保険法施行令第22条の2の2・第22条の3(2026年8月1日施行の改正を含む・2026年10月31日確認)、介護保険法施行規則第83条の4、厚生労働省「高額介護サービス費等の支給並びに食費及び居住費等の負担限度額認定等の運用について」(平成17年9月8日 老介発第0908001号)、厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(2026年10月31日確認)、文京区「高額介護(介護予防)サービス費の支給」(2026年10月26日更新)、福岡市「高額介護サービス費」(2026年7月1日更新)、全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額介護合算」(2026年11月2日確認)