介護保険の限度額を超えると、超えた分だけ保険が使えなくなり、その分は全額が自己負担になります。限度額の中で使った分は、1割から3割の負担のままです。たとえば要介護1で1単位10円、1割負担の人が18,000単位(単位は、サービスの量を表す点数のようなものです)使うと、自己負担は29,115円です。限度額ちょうどなら16,765円なので、12,350円増える計算です。超えそうなときは、まずケアマネジャー(介護の計画を作る専門職)に相談してください。
超えた分だけが全額自己負担になる
家で暮らしながら使うサービスには、要介護度ごとに、1か月に保険で使える量の上限があります。これが「支給限度額」(正式には区分支給限度基準額)です。根拠は介護保険法の第43条です。
上限を超えたときの扱いを、厚生労働省の介護サービス情報公表システムは次のように説明しています。
限度額を超えてサービスを利用した場合は、超えた分が全額自己負担となります。
出典:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」
誤解しやすいのは、超えた月の利用全部が10割になるわけではないという点です。10割になるのは、はみ出した部分だけです。
上限は金額ではなく「単位」で決まっています。要介護1は1か月16,765単位で、要介護度が上がるほど枠も大きくなります(平成12年厚生省告示第33号)。全部の区分の表は介護保険とはにまとめてあります。
要支援の人にも別に限度額があり(第55条)、要支援1は5,032単位、要支援2は10,531単位です。市区町村の総合事業のサービスを併せて使うときは、合わせて限度額を管理する場合があります。たとえば西宮市は、限度額の範囲内で使うものと案内しています。対象になるサービスや扱いは、市区町村か地域包括支援センターで確かめてください。
計算してみる
要介護1で、1単位10円、1割負担の人が、1か月に18,000単位分のサービスを使った場合で計算します。限度額を1,235単位超えています。
| 部分 | 計算 | 自己負担 |
|---|---|---|
| 限度額の中(16,765単位) | 167,650円の1割 | 16,765円 |
| 超えた分(1,235単位) | 12,350円の全額 | 12,350円 |
| 合計 | 16,765円+12,350円 | 29,115円 |
超えた分は全体の7%ほどですが、自己負担は限度額ちょうどのときより1万円以上増えます。同じ条件で2割負担の人なら、限度額の中が33,530円、超えた分が12,350円で、合計45,880円です。超えた分の金額は、負担割合が何割でも変わりません。
この例は、仕組みを分かりやすくするために単純にしています。実際の金額は、たとえば次の点で変わります。
- 1単位の金額は10円とは限りません。地域とサービスの種類で違います。たとえば世田谷区は、区内で使う場合は10円から11.40円と案内しています
- 食費などの実費は別です。デイサービスの昼食代のように保険の対象でない費用は、この計算の外です
実際の単位数と金額は、ケアマネジャーに「今月は枠のどのくらいを使っていますか」と聞くと確かめられます。
限度額に入るサービス、入らないサービス
すべてのサービスが同じ枠を使うわけではありません。要介護の人の枠を使うサービスは介護保険法施行規則の第66条に並んでいます。西宮市や鹿児島市の案内もあわせて、主なものを分けると次のようになります(サービスの定義は介護保険法第8条)。
| 扱い | 主なサービス |
|---|---|
| 限度額の枠を使う | 訪問介護、訪問入浴、訪問看護、訪問リハビリ、デイサービス、デイケア、ショートステイ、福祉用具のレンタル、小規模多機能型居宅介護(通い・訪問・泊まりを組み合わせるサービス) など |
| 限度額の枠を使わない | ケアプラン(介護の計画)の作成、居宅療養管理指導(医師や薬剤師などが行う療養上の管理や指導)、特別養護老人ホームや介護老人保健施設などへの入所 など |
| 別に上限がある | 特定福祉用具(入浴や排せつに使う用具など)の購入、住宅改修 |
ショートステイは施設に泊まるサービスですが、入所とは扱いが違い、毎月の枠の中に入ります。福祉用具のレンタルも枠の中です。用具を借りていると、その分だけデイサービスや訪問介護に回せる量が減ります。枠の余りを考えるときは、レンタルの分も忘れずに入れてください。
超えた分は、高額介護サービス費では戻らない
自己負担が高くなったときに払い戻しを受けられる制度に、高額介護サービス費があります。対象は、介護保険が適用されたサービスの1割から3割の負担です(第51条、介護保険法施行令第22条の2の2)。限度額を超えて全額を払った分は、対象になりません。たとえば文京区の案内は、対象にならないものに挙げています。
払い戻しがあるのは、世帯の負担の合計が所得に応じた上限額を超えたときです(情報公表システムによると、市区町村民税を課税されている世帯は44,400円から、非課税の世帯は24,600円、所得などによっては個人で15,000円)。先の2割負担の例で計算に入るのは33,530円で、超えた12,350円は入りません。
対象や申請のしかたは高額介護サービス費とはで説明しています。
超えそうなときにできること
超えると言われたとき、または今より増やしたいときは、次の順に考えます。
まずケアマネジャーに、何を減らせないかを伝える
「お風呂だけは続けたい」「仕事の日は必ず預けたい」のように、外せないものを先に伝えると組み替えの相談がしやすくなります。相談できるのは、たとえば次のようなことです。
- サービスの配分を見直す ― 同じ枠の中で、どのサービスにどれだけ使うかを組み直します
- 短い時間の利用に変える ― 本人の体力や目的に合う場合に限ります。枠に収めるためだけに変えるものではありません
- 保険外のサービスや市区町村の事業を使う ― 用意があるかどうかは地域や事業所によって違います
デイサービスの回数を例にした説明は要介護1でデイサービスは週何回使える?にあります。
本人の状態が変わったなら、区分変更を相談する
認定を受けたときより状態が変わったときは、有効期間の途中でも介護度の見直しを求められます(要介護は介護保険法第29条、要支援は第33条の2。柏市の案内)。
ただし、枠を増やすための手続きではありません。結果が希望どおりになるとは限らず、軽く判定されると枠が減ることになります。大津市は、申請が却下となる場合もあるので、ケアマネジャーなどとよく相談するよう案内しています。申請する前に、最近の様子を伝えて相談してください。
結果を待つ間に増やして使うときは、特に注意が必要です。結果が見込みより低いと、費用の全部または一部が自己負担になることがあります(和歌山市の資料)。増やす量はケアマネジャーと確かめてください。
市区町村の独自の上乗せがあるか聞く
介護保険法の第43条第3項は、市町村が条例で、国の基準より高い限度額を定めることができるとしています(要支援は第55条第3項)。実施しているかどうかは市区町村によって違うので、介護保険の窓口に聞いてください。
超えることを承知で使う
家族の事情で、一時的に枠を超えても使いたいこともあります。ケアマネジャーは、保険の対象になるサービスとならないサービスを分けてケアプランの案を説明し、本人の文書による同意を得ることになっています(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条第10号)。これとは別に、超えた分の見込みの金額も具体的に出してもらい、無理なく払えるかを確かめてから決めてください。
ケアマネジャー以外の相談先
払い続けるのが難しいとき、説明に納得できないとき、担当のケアマネジャーに言いにくいときは、市区町村の介護保険の窓口か、地域包括支援センターに相談できます。要支援の人も、担当のケアマネジャーか地域包括支援センターが相談先です。
まとめ
- 限度額を超えた分だけ、全額が自己負担になる。限度額までは1割から3割のまま
- 要介護1・1単位10円・1割負担で18,000単位使うと29,115円。単純にした例で、実際の単価は地域とサービスで違う
- 福祉用具のレンタルも枠を使う。居宅療養管理指導は枠の外。福祉用具の購入と住宅改修は別に上限がある
- 超えた分は高額介護サービス費で戻らない。
- 超えそうなら、まずケアマネジャーに相談する。組み替え、状態が変わったときの区分変更、市区町村の上乗せの確認の順に考える。超えても使うなら、超えた分の金額を出してもらって決める。言いにくいときは地域包括支援センターへ
介護保険制度は改正されることがあります。このページは2026年11月4日時点で確認できる法令・厚生労働省資料・自治体の案内に基づいています。1単位の金額や独自の上乗せは市区町村によって違うため、お住まいの市区町村の案内もあわせて確認してください。
情報源:介護保険法第8条・第29条・第33条の2・第43条・第51条・第55条、介護保険法施行規則第66条、指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準第13条、介護保険法施行令第22条の2の2、居宅介護サービス費等区分支給限度基準額及び介護予防サービス費等区分支給限度基準額(平成12年厚生省告示第33号)、厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービスにかかる利用料」(2026年11月4日確認)、西宮市「居宅サービスは一ヵ月に利用できる上限が決まっています」(2022年4月1日更新)、鹿児島市「介護サービス利用時の費用(自己負担額)のめやす」(2022年2月24日更新)、世田谷区「支給限度基準額」(2019年11月11日更新)、文京区「高額介護(介護予防)サービス費の支給」(2026年10月26日更新)、柏市「要介護認定・要支援認定の流れ」(2021年2月26日更新)、大津市「よくある質問」、和歌山市「暫定ケアプランの取扱いについて」(令和5年2月)